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Thursday, June 1, 2023

日本で「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現させるには? - 幻冬舎ゴールドオンライン

日本で「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現させるには?

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公益財団法人 日本自然保護協会

日本で「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現させるには?

2030年までに「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現することが、2050年ビジョンの達成に向けた短期目標とされていますが、この日本で、どう実現しようとしているのでしょうか。みていきましょう。

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世界目標となった人と地球のための「ネイチャーポジティブ」

生物多様性の損失は世界規模で急速に進んでいます。2030年までに、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ*1」のための行動をとることが、2022年の生物多様性条約締約国会議で合意され、2023 年のG7広島サミットでも、環境問題への取り組みと国際間の協調が重要な課題であることが確認されました。

日本でも2023年3月に閣議決定した生物多様性国家戦略で、2030年までにネイチャーポジティブを実現するという目標を打ち出しています。

日本自然保護協会は、生物多様性保全に実効性ある30by30*2を実現し、2030年に地域での生物種の絶滅をなくすとともに、生物多様性を回復基調に導くことを目指し、日本のネイチャーポジティブの実現について検討を進めてきました。

そして、5月22日の国際生物多様性の日に、市区町村からのネイチャーポジティブを実践し、そのために必要なパートナーシップの構築と、生物多様性の定量的な評価に取り組むことを発表しました。この取り組みを「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」と名付けて成果を発信していきます。

*1:人と地球のために、生物多様性の損失を止め、自然を回復させること。2022年の生物多様性条約締約国会議で決議された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で2030年ミッションとしてこの考え方が掲げられている。生物多様性国家戦略2023-2030の目標としても2030年までにネイチャーポジティブの実現が掲げられている。

*2:2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標。「昆明・モントリオール生物多様性枠組」にも組み込まれ「30by30目標」と呼ばれている。

「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」は、環境省をはじめ、これまで日本の生物多様性保全に連携してきた方々との協力関係を強化しながら推進していきます。

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日本版ネイチャーポジティブは市区町村から

1.市区町村からネイチャーポジティブを実現

日本の生物多様性は、地域の自然的・社会的条件によって異なるため、日本のネイチャーポジティブは、生物多様性の特性と社会制度の二つの側面から、市区町村を基にして実現していくことが重要です。

「生物多様性国家戦略2023-2030」では、ネイチャーポジティブを実現するための社会の根本的変革の必要性が強調され、生物多様性の保全と、社会経済活動、気候変動対応、地域課題解決の統合的な取り組みが求められています。地域の未来像に向けて、統合的な取り組みができる主体として、市区町村は重要な役割を担っています。

地域でネイチャーポジティブを実現するためには、地域の自然を将来にわたって保全し、価値を高め、生物多様性に配慮した産業を推進する必要があります。この取り組みを通じて、地域の魅力を高め、地域産業の付加価値の向上や、教育、福祉、防災・減災などに地域の生物多様性を活かすことに繋げていくことが重要です。

日本自然保護協会は、群馬県みなかみ町(以下、みなかみ町)を先駆的なモデル地域と位置づけ、2023年2月27日に、みなかみ町と三菱地所株式会社との3者連携協定を結び具体的に活動することを発表しました。また、5月16日には、埼玉県所沢市と株式会社NTTドコモとの3者連携協定を締結しており、今後、他地域への展開を積極的に進めていきます。これらの実践を通じて、市区町村のネイチャーポジティブに向けた目標設定や、その取り組みを認定する制度をつくります。また、「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」の実例として、COP16に向けた生物多様性条約科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)*3などの機会を通じて世界に発信します。

*3:生物多様性条約第25条に基づいて設立され、条約の実施状況について科学技術的な見地から締約国会議(COP)および他の補助機関に対して助言を行うことを任務とする。通称「サブスタ」と呼ばれている。

2.パートナーシップの促進

市区町村のネイチャーポジティブを実現するためには、多様な主体によるパートナーシップが不可欠です。実現への課題を三つに整理すると、第一は、市区町村に生物多様性保全やネイチャーポジティブを実現するための資金と専門性が不足していること、第二は、生物多様性に関する情報が不足していること、第三は、市区町村の範囲だけでは生息地を全てカバーできない広域な生息地を必要とする生物種の存在です。

資金と専門性の不足を補うためには、ネイチャーポジティブへの積極的な取り組みを検討している企業などとのパートナーシップにより資金供給を促進し、その資金を活用して、日本自然保護協会やコンサルタントなどとのパートナーシップにより専門性を担保します。生物多様性情報の不足については、NPOやナチュラリスト、専門家とのパートナーシップにより、地域の生物多様性情報を収集することで、現状を正確に把握します。広範囲の生息地を必要とする生物種については、その保全を踏まえ、市区町村間のパートナーシップを促進していきます。河川の流域や上下流などの生態系のつながりに加え、既存の姉妹都市や、都市部と中山間地域など、様々な市区町村間で効果的なパートナーシップを構築できる可能性があります。

日本自然保護協会は、市区町村のネイチャーポジティブを実現するために、全国2万5,000人・団体を超える日本自然保護協会の会員・自然観察指導員、自治体、企業とのネットワークを活用して、パートナーシップを構築します。また、モデル地域での実践を通じて、より効果的なパートナーシップを追求します。2025年までに60地域でのパートナーシップ構築を目指して、市区町村、企業などを現在募集しています。

3.生物多様性の定量的な測定と評価の推進

日本自然保護協会は、地域に即した保全や回復についての目標を設定することによって、進捗状況や関わる主体ごとの貢献度などを定量的に評価する取り組みを進めて行きます。このことは、市区町村におけるネイチャーポジティブの実現を促進することにつながります。この取り組みは、「IUCNネイチャーポジティブアプローチ(*4)」にも適合していきます。

*4:国際自然保護連合(IUCN)では、ネイチャーポジティブの実現に向けた関心の高まりを受けて、ネイチャーポジティブを定義し、自然の保護と回復に向けた貢献を測定する方法論「IUCNネイチャーポジティブアプローチ」の開発が進められている。2022年10月13日の「IUCNリーダーズフォーラム」でワーキングペーパーが公表されている。

Summary-Towards an IUCN nature-positive approach: a working paper(IUCN)

日本版ネイチャ―ポジティブアプローチは、国立研究開発法人国立環境研究所、株式会社シンク・ネイチャー、株式会社バイオームに協力いただきながら検討を進めており、市区町村からネイチャーポジティブを実現するために、今後も様々な手法を追究していきます。

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今回ご紹介したテーマをはじめ日本自然保護協会の活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられています。

個人からの保護プロジェクトへのご寄付や、SDGsやESG投資に積極的な企業からの協賛寄付のほか、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。

大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活などの専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。

なお、日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。

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