「クアオルト健康ウオーキング」と呼ばれるドイツ発祥の健康法が注目されている。無理なく歩いて、心身の健康づくりや健康寿命の延伸につながる“持続可能な”ウオーキング。地域資源を生かしたコース設定により、まちづくりや観光振興の新たな手段として導入する自治体も増えている。 (有賀博幸)
◆目標心拍数を意識
クアオルト健康ウオーキングは、ドイツのクアオルト(健康保養地の意)で行われている自然を活用した運動療法を基に考案された。傾斜など運動負荷を考慮して設計されたコースに心拍数の計測地点を複数設置。全力時の60%程度の運動強度となる「百六十から年齢を引いた心拍数」を目標に、運動量を調整しながら歩く。専任ガイドが参加者の体調を確認しながら歩き方を指導する。
普及に努める日本クアオルト研究所(名古屋市)代表の大城孝幸さん(62)のガイドで、岐阜市郊外の「百々ケ峰(どどがみね)・ながら川ふれあいの森コース」(全長三・一五キロ)を歩いてみた。
血圧と脈拍を測った後、入念にストレッチをしてから出発。大城さんから「歩行中のポイントは『頑張らない』と『(肌の感覚が)冷たくさらさら』です」とアドバイスを受ける。上り坂の最初の計測地点で十五秒間脈を測る。四倍して一分に換算すると一一二に。六十歳の記者の心拍数の目標数は一〇〇なので、十二超えている。次の区間では少し歩調を緩めた。
日なたの気温は午前十時すぎで三〇度を超えているが、木立の中は冷気が漂い、ウグイスの澄んだ鳴き声やせせらぎの音が心地いい。心拍数が目標値を下回れば、意識しておしゃべりすることも効果的だそうだ。眺望が利く「ヤッホポイント」では、大城さんに倣って大声で叫ぶと、山びこが返ってきた。肺にたまった空気が一気にはき出され、スカッとする。
今回のコースの心拍数計測地点は六カ所。正味一時間半のウオーキングを終えて血圧を測ると、最高値だったスタートの一一九に対し、到着時は一一一に。汗は軽くかいた程度だった。大城さんは「ガイドが同行し、エビデンス(科学的根拠)に基づいて取り組むクアオルト健康ウオーキングは、ウオーキングの教習所のようなもの」と話す。
◆観光振興 広がるコース整備
クアオルト健康ウオーキングは、蔵王連峰の玄関口に当たる山形県上山(かみのやま)市が、健康・観光・環境を柱にしたまちづくりの重要施策として二〇〇八年度に始めた。ドイツの専門家の鑑定を受けた認定八コースが整備され、年間一万人超がウオーキングを楽しんでいる。
日本クアオルト研究所によると現在、計二十三自治体が導入しており、本年度中にさらに六自治体がコース整備を予定する=図。このうち「健幸都市ぎふ」を掲げる岐阜市は、「出かけて健康になるまち」の実現に向けてウオーキングを活用。百々ケ峰、岐阜城を頂く金華山山麓の二コースに加え、都市型コースとして市中心部の都市公園や川を巡る二コースを整備、今春に「クアの道・シティ」の認定を受けた。定期講座も開催する。専任ガイドの資格を持つ市健康増進課の丸毛健裕(まるもたてひろ)さん(66)は「市民の健康増進を図りながら、まちづくりや観光振興につなげたい」と話す。
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