国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関が世界自然遺産への登録を勧告した
諮問機関「国際自然保護連合」(IUCN)は、5月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の登録を勧告。7月16日から始まるユネスコの世界遺産委員会で正式決定される見通しとなっている。
4島で最も開発が進んでいない西表島は大自然が魅力で、観光客数は2007年に過去最多の40万5646人を記録した。近年は30万人前後だが、オーバーツーリズム(観光公害)が指摘され、島にしかいない国の特別天然記念物・イリオモテヤマネコの交通事故死が相次ぐなど、生態系にも影響が及んでいる。
島で約30年ガイドを務める森本孝房さん(64)は「ゴミをポイ捨てする観光客も増えている。『Go To キャンペーン』では日帰り客が押し寄せ、港にはゴミが大量に浮いていた」と実情を語る。
諮問機関は勧告で、西表島について、観光により希少動物の交通事故死や外来種の持ち込みにつながる危険があると指摘し、「観光客の上限を設けるか、減少させる措置」を求めている。
町は、島内のエリアの特性に応じて入域者数の上限や制限方法を含むルール作りを進めており、現状の観光客数を基に上限を設定する。財団が発足すれば、観光客らの入域によって各地の自然環境にどんな変化が生じるかを詳細に把握でき、自然環境の変化に応じて上限設定を逐次見直すことが可能になる。
関係者によると、財団は、町のほか町観光協会や自治会の関係者、観光ガイドら約30人の役員、職員で構成。独自に生態系調査などを展開する島内外の団体にも参画してもらう。昨年から免許制になったガイドの申請事務手続きも担う。港で観光客にルールを周知する広報活動も検討している。
町観光協会の大島佐喜子会長(58)は「観光客の増加が予想されるが、希少な自然環境を島民が率先して守っていく必要がある。観光との両立ができるようにしたい」と話す。
町は近く、財団発足後のモニタリングや保護活動などの資金に充てるため、ふるさと納税を使って賛同者から資金を募る「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」を開始する。期間は3か月間の予定で、ステッカーなどの返礼品を検討している。
モデルとするのが、2005年に世界自然遺産に登録された知床(北海道)で活動を続ける公益財団法人「知床財団」だ。登録後に観光客が植物を踏み荒らすなどの被害が深刻化したが、官民一体の財団が一部地域の入域制限を後押しし、環境保全の成果を上げた。
地元の北海道斜里町が1988年に設立。遺産登録を契機に環境保全の方法を協議し、2011年、人気の観光地「知床五湖」に、ガイド付きか財団のレクチャーを受けた観光客のみが入域できるよう制限をかけた。自然環境は回復し、専門ガイドの収入増にもつながったという。
竹富町と斜里町は1973年に「姉妹町」として交流を始め、西表財団発足に向けても意見を交わしてきた。知床財団は「自然保護には様々な団体を一元管理できる組織が必要。西表財団が地域で果たす役割に期待したい」としている。
世界遺産勧告の西表島 観光客管理して自然保護 - 読売新聞
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