世界中の都市では急激な開発が進み、多くの自然が失われつつある。その一方で、2050年には地球人口の約7割が都市に住むと言われているという。都市における自然との共生は重要な課題で、人々が健康で創造的に暮らしていくために必要な要素であるといえる。こうした背景から、都市にその地域らしい自然の要素を取り込み、人々の生活を豊かにする手法として、「バイオフィリックデザイン」という考え方が注目を集めている。
日建設計は、この「バイオフィリックデザイン」を取り入れた建築物の導入効果について定量的観点による可視化を試みており、同コンセプトに基づいて設計した「JR熊本駅ビルプロジェクト」の調査結果を公表した。
まず、熊本の阿蘇地方の自然と建築を融合させた「立体庭園」を屋内に創出。商業ビルの室内から屋外まで連続する「水」をテーマとしたパブリックスペースで、駅ビル内の回遊・滞在が誘発され、立ち寄り店舗数1.5倍・滞在時間1.4倍長くなったという。
メインとなる水景としては、熊本の名所である鍋ヶ滝をモチーフとした落差約10m、幅10mの滝を設置。建物内には滝の音と気流が発生するそうで、高さ10mの滝のダイナミックさが楽しめ、なおかつ室内における心地よい音環境を提供している。
1Fの滝の近くでは、自然の風の特性と呼ばれる「1/f ゆらぎ」に近い気持ちのよい風が感じられ、ショッピングを楽しみながら自然の風を感じることのできる環境となっている。
また、JR熊本駅ビルは周囲の視界がひらけた立地にあり、自然光を取入れやすい環境にある。最上階の天窓や壁面ガラスには水が流れ、吹き抜け空間は開放感のあるガラス壁面となっているので、多くの自然光を取り入れている。
以上の調査から、同ビルでの「バイオフィリックデザイン」が生んだ主要な効果として、つい語りたくなる独特な環境要素をもつ空間であり、来訪者の「新しさ」「美しさ」「快適さ」といったさまざまな感覚価値に訴求していることがわかったそうだ。
日建設計、建築や都市に自然を取り込む 「バイオフィリックデザイン」の効果を発表 - AXIS
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