7月に世界自然遺産に登録された奄美大島(鹿児島県)で、希少な植物の盗掘や昆虫の違法採取が後を絶たない。国内初登録の屋久島(同)は過去の盗掘で植物が絶滅の危機に直面し、白神山地(青森、秋田県)でも原生林が損傷するなど、各地で自然保護の難しさが浮き彫りになっている。
「希少なコゴメキノエランが着生していたのですが……」。奄美大島の山中で、自然保護ボランティア常田守さん(68)が指さした樹木には、ランを株ごと盗掘した刃物の跡が残っていた。
国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、亜熱帯性気候で独特な進化を遂げた動植物が分布。奄美大島は日本の生物種の約13%が確認されており、生物多様性を保全する上で重要な地域と認定された。
登録区域の多くの場所は、植物採取が禁じられている。環境省や自治体はパトロールや空港の荷物検査を強化するが、7月以降も盗掘が相次ぎ、希少種の自生地をスコップで掘り返した跡が見つかるなど、違法採取が疑われる事案も目立つ。
登録区域と、その周囲は国立公園に指定され、自然公園法で、わなの無許可設置は原則禁止。だが、鹿児島県によると、ストッキングに果物を入れ、においで昆虫をおびき寄せるわなが昨年度は島内14か所で、今年度も11か所で見つかった。
珍しいクワガタの人気が高く、島にしか生息しない個体が、ネットオークションで1匹約1万~3000円程度で出品されている。
環境省奄美野生生物保護センターの後藤雅文・離島希少種保全専門官(35)は言う。「特定の昆虫が多く採取されれば、種のバランスが崩れてしまう」
屋久島は1993年に登録されると、観光客でにぎわう一方、根を踏まれた樹木は衰弱し、山野草が盗掘された。
地元自治体などが遊歩道を整備し、見回りを強化。樹木は回復傾向だが、2016年に高山植物ヤクシマリンドウが、その3年後にはヤクシマフウロが、激減を理由に、種の保存法の絶滅危惧種に指定された。
屋久島観光協会の中馬(ちゅうまん)慎一郎・ガイド部会長(49)は「盗掘は減ったが、一度失われた自然は簡単に戻らない」と語る。
青森と秋田県にまたがる白神山地でも、ブナの原生林に刃物でカタカナが刻まれるなど、毎年のように人為的な傷が確認される。禁止されている、たき火の跡も見つかった。
奄美大島の山中、希少ラン盗掘・違法わなで昆虫おびき寄せ…壊される「世界自然遺産」 - 読売新聞オンライン
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