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Monday, December 27, 2021

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len – Local Speciality Factory – - 朝日新聞デジタル

目を見張るほどのパンが並んでいた。たとえば、つやつやと白い肌を輝かせる食パン「Lenブレッド」。麦が熟し、爛(ただ)れたように、デンプン質の香りを空中に飛散させていたのだ。つるりとした高加水の生地はすぐさま小麦のミルクとなり、とろとろと喉(のど)へ流れ落ちる。はちみつに似た甘さの快楽は脳天までじーんと走り抜けた。

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len - Local Speciality Factory -
自然酵母のLenブレッド

この甘さをはちみつ由来のものだと私は思い込んでいたが、正体について知ったときは衝撃だった。Lenの地元・川崎産の柿から採ったフレッシュな液種。それが、「奇跡の小麦」北海道産キタノカオリと出会い、フローラルな甘さへと昇華。砂糖も油脂も使用することなく。まるでミツバチのように、パン職人も発酵箱の中で素敵な甘さを作りだす。

「Made in Local」。Lenが掲げるコンセプトである。川崎産の素材を軸にパンが作られる。Lenブレッドでいえば、川崎市の生産者・篠田隆文さんの柿(季節によってイチゴやミカンなど)。野菜などの農産物にとどまらず、しょうゆやおからまで川崎の食材を使用。都会でバラエティー豊かな素材が生み出されているありがたさをパンで感じられる。

カフェを営んでいた丸山佑樹さんがLenを創業したきっかけは、客の会話の中で何度も聞いた言葉だった。

「溝の口にもおいしいパン屋がほしい」

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len - Local Speciality Factory -
Len – Local Speciality Factory – 溝の口ファクトリー

折しも、コロナ禍で飲食店が営業を自粛、丸山さんが素材を仕入れていた近隣の生産者たちは、生産物の売り先を失い困っていた。

「この街に足りないのはパン屋だ」と丸山さんはすぐ動き、2020年12月、溝の口に「Len」をオープンさせると、2021年3月には二子新地、12月に「マルイファミリー溝口」にも出店。その人気ぶりがわかるというものだ。

パン職人・鈴木孝貴さんを迎え入れたことも大きな勝因。得意の高加水生地を用い、丸山オーナーが提示した地元素材からイノベーティブなパンを作り出す。

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len - Local Speciality Factory -
川崎産蜂蜜のクイニーアマン

「川崎産蜂蜜のクイニーアマン」は、はちみつのシロップがきらきら輝くドーム形のクロワッサン。シロップは熱で焼かれてカラメル化、飴(あめ)のようなテクスチャーに。クロワッサン生地と相まって、ばりばりと爆(は)ぜるように崩壊、極めて甘美にはちみつがとろけだす。その直後から、シルキーなやわらかさを保つ中身からはちみつバターがあふれつづける。ばりばり感、飴のとろけ、はちみつバターのマリアージュと、激しい美味が三つ同時進行する恐るべきクイニーアマンだ。

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len - Local Speciality Factory -
(上から時計回りに)川崎産じゃがいも きのこ 柚子(ゆず) 自家製ラグーソースのアッシェ・パルマンティエ、川崎産蜂蜜のクイニーアマン、メロンパン

パンに加え、イタリアンやフレンチの研鑽(けんさん)も積んだ鈴木さんの料理の腕を生かした「川崎産じゃがいも きのこ 柚子(ゆず) 自家製ラグーソースのアッシェ・パルマンティエ」。チーズ、マッシュポテト、ベシャメルソースというとろとろ三つ巴(どもえ)。そこへ、牛挽(ひ)き肉100%ラグーソースが肉の雄叫(たけ)びを発する。皿の役目を果たすのは「カンパーニュ サステイナビリティ」。すばらしい歯切れだ。ぱりっと粉々に弾けると、濃厚に香ばしさを放つ圧巻。売れ残るなどしたカンパーニュをラスクのように乾燥焼きし、粉砕して再利用する。ロスを防ぎ、パンに深みや歯切れよさを与えるという一石二鳥のアイデアだ。

自然酵母食パンの甘みの正体は…… Made in 川崎の素材を生かす/Len - Local Speciality Factory -
カンパーニュ サステイナビリティ

こうした持続可能性への配慮は、「Made in Local」が目指すところでもある。たとえば、川崎市の「越路屋豆腐店」のおからからグラノーラを作る。食物繊維たっぷりのおからだが、大部分は産業廃棄物として捨てられる運命にある。それを引き取って使用すれば、グラノーラを消費者に安価に提供できるし、豆腐屋さんも助かり、パン屋としては売り上げにもなる。のみならず、おからを処分するときの燃料代などのコストも削減できる。食品ロスを防ぐことで、いわゆる「三方よし」(三方=消費者、生産者、パン屋)に加え「環境も入れて四方よし」だと丸山さんは言う。ローカルにこだわることで、素材の流れが可視化され、より食べ物を大事にする意識が高まることのメリットではないだろうか。

YouTubeチャンネル 「パンラボ」

都会の中の小さな自然を見つけて、おいしいパンを作りだす。あたかもミツバチが身の回りのなにげない花からはちみつを作り出すように。私たち人間もそんなふうに地域と共生すべきではないか、とLenのパンを食べながら考えた。

Len – Local Speciality Factory –
溝の口
川崎市高津区溝口3-13-5 LUNA PIENA 101
044-281-4456
11:00~19:00
不定休

二子新地
川崎市高津区諏訪1-8-1 Romsビル3階
電話番号:未定
8:00~19:00
不定休

マルイファミリー溝口
川崎市高津区溝口1-4-1
044-712-7535
10:30~20:00

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)
「このパンがすごい!」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)

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