本人や肉親の頭髪をかつらに仕立てる茨城県筑西市の女性が、髪に悩みを持つ人たちの心の支えとなっている。かつら製作会社「ドリームアチーブメント」を経営する野沢ひろみさん(52)。利用者の中には、交通事故で早世した娘の髪の毛を、形見として身に着ける母親もいる。「髪は魂そのものなんです」と野沢さんは話す。(出来田敬司)
◆自身も悩んだからこそ
同社の創業は2007年。インターネットで注文を受け付け、近県であれば野沢さんが美容室や自宅などに赴いて対面する。客の頭の型取りをしたり、毛量を確かめたりするのが大切だからという。
自身が長年、遺伝性の脱毛に悩まされてきた。自宅で塾の講師をしていたが、教え子から心無い言葉を吐かれたこともあった。半ば心を病み、30歳ごろから大手メーカー数社のかつらを使ってみた。
高額な割に不満を感じた。裏地の素材に難があり、夏は汗がしたたり落ちる。植毛の技術も高くなく、一目でかつらと分かる。「それなら自分でつくってみよう」。決断は速かった。
経済産業省が後押しするビジネススクールでネットでの起業を学んだ後、日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて、海外の複数のかつらメーカーをリサーチ。東南アジアの会社に生産を委託することにした。
08年ごろ、がんで闘病を続ける女性から「自分の髪でかつらを」と依頼があった。化学繊維や他人の髪からつくったかつらには、抵抗があるとのことだった。女性が差し出そうとしたのは、抗がん剤治療で抜け落ちる前の髪だった。
「自毛であれば、仕上がりは自然かも」と野沢さんは直感した。染色やパーマなどで髪の状態はまちまちだったが、新たな加工法を開発することで課題を克服。この時の経験が今のかつらづくりに生きている。
◆「かつらは人の気持ちを背負っている」
遺伝や加齢、抗がん剤の副作用―。薄毛や脱毛の理由はさまざまだ。
千葉県の女性は、薄毛を気にした母親のかつらに役立ててもらおうと、長年髪を伸ばしていた。しかし、女性は交通事故で急逝。母は遺体から髪を取り、野沢さんを訪ねた。
東京都の女性は、がんで余命宣告された母に、と自分のロングヘアをかつらにした。ふさぎ込んでいた母親は晴れやかになり、亡くなるまで外出を楽しんだ。
野沢さんは「かつらはただの『物』じゃない。人の気持ちを背負っている。かつらをつくることで、人にパワーを与えられればうれしい」とほほ笑む。
問い合わせはドリームアチーブメント=電0296(28)5097=へ。
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