羽田からプライベートジェットで松本空港に飛び、自然の中の古民家に滞在して日本人の長寿の一因ともされる発酵食品を堪能し、最先端の人間ドックも受けて、心身ともにリセットして仕事に戻る。海外富裕層をメインターゲットにした「ウェルネスツーリズム」を、長野県松本市の宿泊・飲食業者、医療法人、羽田空港ターミナル関連会社の3者がタッグを組んで始める。
長寿国を訴求
3者は、松本市内で古民家ホテルなど運営する扉ホールディングス、相沢病院を経営する社会医療法人財団慈泉会、日本空港ビルデングの完全子会社の羽田未来総合研究所。
ウェルネス(元気、健康)ツーリズムは、長寿国である日本の魅力を訴求できる切り口として、観光庁や国土交通省などが重点的に海外に売り出しているものの一つ。
3者は今年秋ごろに、中国などから最初の団体旅行を試験的に実施する計画。5泊6日のプラン例として、初日に相沢病院の関連施設で「体力ドック」を受け松本市内の古民家ホテルに宿泊、2、3日目は人間ドックでMRIやPETなどの精密検査を受ける。3日目の夜から白馬村に移動し、スキー滑走や発酵食品の一つである日本酒の酒蔵訪問をして、5泊目は松本市の温泉旅館に宿泊するというもの。
期間中は、日本に昔からある発酵食品を中心としたメニューや里山で収穫した自然食材を中心とした和食、懐石料理などを提供する。
羽田と連携
羽田未来総合研究所の大西洋社長によると、すでに海外の富裕層の一部は東京都内の病院などに直接、人間ドックを申し込んで来日しているという。羽田空港に近い大型商業施設「羽田イノベーションシティ」では来年にも、先進医療技術を活用した高精度健診サービスなどが始まる予定で、日本の医療サービスの知名度はさらに高まる見通しだ。
訪日観光客が国内で消費する額は、新型コロナウイルス禍前の令和元年平均で15万8531円(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)にとどまる。「どうせなら東京より自然豊かな場所で健診を受けたいという人もいるはず。日本に到着したときからアテンドし、富裕層が満足するプランを提供すればまだまだ伸びる」と大西社長はプランを描く。
その中で、長野県は、国民健康保険中央会が昨年7月に発表した平均自立期間(日常生活動作が自立している要介護度1以下の期間)で男女とも全国1位となるなど、長寿県の一つとして知られる。
病気になる前に
慈泉会の相沢孝夫理事長は、これからの医療は病気になってからでなく、病気になる前に手を打つことが大事だとし「いまの人間は社会の急激な変化などで逃げ場のない状況に陥っており、自分を見つめなおす場と時が必要」だとする。
昨年、相沢健康スポーツ医科学センターを立ち上げて、40~60代を対象とした体力低下の予防カウンセリングを始めた。「なかでも運動、食事、精神的なリセットが大事だ」と話す。
扉ホールディングスの斉藤忠政社長は「2030年には、日本にはメディカルチェックに行く、ウェルネスをしに松本へ行くというようなものにしたい。食、文化、アートにも触れて、また来年チェックに来ようとリピートしていただくようになれば」と、自然にとどまらない松本の魅力をアピールする。
アルプスの大自然や城下町のたたずまいで観光客の明日への元気をリセットしてきた信州・松本だけに、「ウェルネスの聖地」が浸透するのも難しくなさそうだ。(原田成樹)
【地方に勝機】自然、発酵食品、医療…松本を「ウェルネスツーリズム」の聖地に 異業種がタッグ - 産経ニュース
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