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Tuesday, December 13, 2022

自然のリスク管理、30年目標が焦点 COP15で議論 - 日本経済新聞

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

12月7日に国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)がカナダ・モントリオールで開幕した。COP15は過去最大規模の1万2000人の参加を見込んでおり、日本からも経団連が約50人の関係者を送り込むなど注目を集めている。

産業界が注目する理由は、カーボンニュートラルの次の経営課題である「ネイチャーポジティブ」を実現する目標について、国際的に合意されるかが焦点となっているからだ。さらに、金融機関などは企業の生物多様性に関する活動をESG(環境・社会・企業統治)の投資判断に入れる契機になるとみて、関心を高めている。

ネイチャーポジティブとは、2030年までに自然の損失を食い止めてプラスに転じることをいう。開発や農業に伴う土地利用、貿易などの人間の活動が原因で、生物多様性の損失が続いている。それは資源の減少につながり、企業に原材料の争奪戦や資源価格の高騰というリスクをもたらす。

約44兆ドルを自然に依存

世界経済フォーラムは世界の国内総生産(GDP)の半分に当たる約44兆ドル(約6000兆円)が自然に依存しており、自然の毀損が経済的損失につながることを指摘している。一方で、自然を増大させる経済に移行すれば、30年までに年間最大10兆ドルの価値と3億9500万人の新規雇用を生むと報告している。

COP15では、ネイチャーポジティブ達成に向けた「2030年の世界目標」が採択される予定だ。その中には、地球上の陸域と海域のそれぞれ30%を保全する「30by30」のほか、「企業活動の生物多様性への依存と影響を評価・報告し、負の影響を低減する」といった目標が盛り込まれる見通しだ。

COP15で採択される30年の世界目標には強制力がない。ただ、企業に自然に関する情報開示を求める自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が実質的な強制力を持つだろう。TNFDは企業が自然への依存と影響、リスクと機会を把握して開示する枠組みをつくる国際的なタスクフォースだ。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の自然版に当たり、開示枠組みは23年9月の完成をめざす。

将来的には、30年の世界目標に沿うTNFD開示によって、企業は投資家から選別されることになる。COP15の決議に産業界が関心を高める理由はそこにある。

自然ベンチマークを発表

世界の投資家は企業が「ネイチャーポジティブ経営」に取り組んでいるか、評価を本格化させている。英アビバやオランダのロベコなど300団体が参加する投資家イニシアチブ「ワールド・ベンチマーキング・アライアンス」は12月上旬、企業の自然への取り組みを評価する「自然ベンチマーク」を発表、それに基づくランキングも公開した。

自然ベンチマークは世界の1000社を対象に評価し、22年はアパレル、建設・エンジニアリング、化学など日本企業35社を含む400社を採点した。1位は仏ケリングで、日本企業はファーストリテイリングの9位を筆頭に、ブリヂストンの28位、積水ハウスの41位と続く。

評価結果は「生物多様性のための金融誓約」に署名した金融機関が活用を検討中だ。署名機関は111機関、運用資産総額は16兆ユーロに上る。今後、企業とのエンゲージメントの際に活用されそうだ。

自然保全のファンドも登場

自然や生物多様性に関するファンドも登場した。英金融大手HSBC傘下で自然資本に特化した運用を手掛けるクライメート・アセット・マネジメントは、22年内をメドに総額10億ドルの「自然資本インパクト投資ファンド」の本格運用を始める。「ネットゼロとネイチャーポジティブの達成」と銘打ち、持続可能な農業や林業、自然保全・再生事業に投資する。

ロベコも22年10月、ネイチャーポジティブへの移行で事業機会を得る企業に投資するインパクト投資ファンドの運用を始めた。投資先は「持続可能な土地利用」や「淡水のネットワーク」などの4分野で、40~80銘柄を選ぶ。

MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険は、自然や生物多様性の保全や回復に貢献する保険商品の提供を22年6月に始めた。脱炭素とネイチャーポジティブに関係する保険料収入は21年度に100億円程度だが、今後年率18%の増収を見込む成長市場になるとみる。

先進的な企業の中には、長期ビジョンや中期経営計画で「ネイチャーポジティブ」を打ち出したり、「自然」を経営の中核に据えたりする企業が出てきている。キリンホールディングスは、グループ環境ビジョン2050で「事業拡大を通じてネイチャーポジティブを目指す」ことを打ち出した。ブリヂストンは生物多様性の「2050年ノーネットロス(損失の実質ゼロ)」を掲げている。

各社の活動は主に3つに分類できる。1つ目は企業活動が世界のどの地域のどんな自然に依存し、影響を与えているかを把握して、対策を講じるサプライチェーン(供給網)のリスク管理だ。将来のTNFD開示にとっても重要になる。

2つ目は大規模な植林や里山の緑化など、自然を増大させる取り組みだ。植林では炭素蓄積量を増やし、気候変動対策と生物多様性保全の両立を目指す企業が目立つ。サントリーは「天然水の森」で、水資源を蓄えながら生物多様性の向上を目指す森作りを進めている。

3つ目は生物多様性のビッグデータを収集・活用し、新しい価値や市場創出につなげる取り組みだ。NECは衛星画像や気象情報を取り込み、土壌温度や水分をセンサーで監視し、人工知能(AI)で営農アドバイスをする農業ICT(情報通信技術)を11カ国で展開している。土壌劣化の一因となる過剰な窒素肥料を削減することで、生物多様性の保全を打ち出す。

また、ブロックチェーン技術を用いて伐採から製材、販売までの木材流通の過程を記録するシステムを提供している。顧客は生物多様性保全にとって重要なトレーサビリティーの確保や木材の合法性証明に活用できる。

自然の膨大なデータを収集・分析し、企業価値向上に結び付けていく。世界経済フォーラムが指摘した10兆ドルの市場を見据え、生物多様性を保全し持続可能に利用する企業や金融機関の活動はCOP15を契機に本格化するだろう。

[日経産業新聞2022年12月9日付]

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