本記事は、桐生稔氏の著書『話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
相手の興味を引き出す、質問の極意とは?
有名な実験があります。上のイラストを見て、あなたはどちらに目が行きますか?
おそらく、右の欠けているほうではないでしょうか。
空いているところに目が行く。面白い心理ですよね。
清少納言は「月は満月よりも、幾分欠けているほうが風情がある」と言いました。ミロのビーナスも両腕が欠けています。
欠けているところに目が行く。
これは、空白があると埋めたくなるという人間の心理です。
この人間の心理に訴えかける手法は、いろいろなところで活用されています。
例えば、映画の宣伝は「このあとどうなる?」みたいな感じで終わります。まさに空白を作って続きが気になるようにしています。
くじ引きの抽選で「3等はお食事券、2等はディズニーランドのペアチケット。そして1等は……、当たってからのお楽しみ!」なんて言われたら気になりますよね。
また「話がうまくなるコツは3つあります」と言いながら、2つしか言わなかったら「あと1つは何ですか?」と聞きたくなります。
全部「空白は埋めたくなる」心理です。
ということは、相手の興味を引き出すには、空白を作ればいいんです。
売れる営業マンは空白を作るのが上手です。
例えばこんなトークです。
「日本人男性の死因で3番目に多いのが肺炎です。2番目に多いのが心疾患です。1番は田中さんもよくご存じの病気です。もしかすると、身内でその病気になられた方がいるかもしれません。何だと思いますか?」
と、「1番多い死因は?=空白」を作ります。そして相手に「えっ、何だろう?」って思わせてから……。
答えは「癌です」と伝えます。
あえて空白を作る、これが相手の興味を引き出すトリガーになります。
ではどうやって空白を作るのか?
たった一言、こうつけ加えてください。
「もし」
「if」を使って質問を投げかけてください。
突然ですが、
「もし、何も気にせずお腹いっぱい食べていいよ」
と言われたら、あなたは何を食べたいですか?
私はミスタードーナツでお気に入りのドーナツをお腹いっぱい食べたいです。
もし、宝くじで1億円あたったら何に使います?
車を買いますか? 家を買いますか? それとも貯金しますか?
もし、友人と同じ人を好きになったら?
友人に言いますか? 諦めますか?
-
- もし、お腹いっぱい食べていいよと言われたら → ◯◯を食べる
- もし、宝くじで1億円あたったら → ◯◯をする
- もし、友人と同じ人を好きになったら → ◯◯する
「もし」で質問されると、その後には必ず空白が生まれます。
もし+◯◯(空白)?
相手は答えたくなるのです。
ビジネスシーンで、部下からアイデアがほしい場合は、
「もし、社内のコミュニケーションを円滑にするなら、何に取り組めばいい?」
「もし、今すぐ実施できることがあるとしたら、何だと思う?」
「もし、1つだけあげるとしたら、何ができるかな?」
と質問します。「もし」で質問されると、社内のコミュニケーションなんて私には関係ないと思っている部下も、何かしら考え始めます。
やりたくない仕事だって、興味に変えることができます。
「もし、楽しみながら倉庫の片づけをやるとしたら、どんな方法があると思う?」
部下から、「音楽をかける」「誰が一番早く片づけたかを競争する」「一番早く片づけを終えた人に部長がランチをおごる」など、いろいろなアイデアが出てくると思います。
「もし」は、仮の話なので発想が広がりやすいのです。
デートに誘うなら、「もし、ご飯食べるなら洋食派? 和食派?」「もし、海に行くなら、晴天の海がいい? それとも夕暮れの海が好き?」
こう質問すると答えやすくなります。
仮の話なので、答えても責任が発生せず、相手は答えやすいのです。「もし」から始まる質問は非常に単純ですが、効き目は抜群です。
あなたのちょっとした問いかけが、相手の脳内を活性化させます。
ぜひ、興味を引き出すトリガーとして「もし」を使ってみてください。
- 話し方の正解
- 「もし+◯◯?」の質問で相手の興味を引き出す
桐生稔
◎13万部のベストセラー『雑談の一流、二流、三流」の著者。株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー。日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー。一般社団法人日本声診断協会音声心理士。
◎1978年、新潟県十日町市生まれ。2002年、大手人材派遣会社に入社。営業成績がドベで新卒3カ月にして左遷される。そこから一念発起し、全国で売上達成率No.1を実現。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。2017年、社会人の伝わる話し方を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。これまでに全国40都道府県で年間2,000回にわたり「伝わる話し方」のセミナーや研修を開催してきた。
◎セミナーや研修では、「1回で伝わる話し方テンプレート」「30秒で伝えるピンポイントトーク」などが大好評を博す。60分に20回以上笑いが起こるほど会場が盛り上がり、最後には衝撃的な感動が走る「心震わすメソッド」が評判を呼び、日本経済新聞、プレジデント、東洋経済オンライン、Yahoo!ニュースで紹介される。テレビ朝日とABEMAが共同製作する人気番組『マッドマックスTV論破王』では、ディベートの審査員も務めている。
◎著書に、『雑談の一流、二流、三流』『説明の一流、二流、三流』(以上、明日香出版社)、『10秒でズバっと伝わる話し方』(扶桑社)、『緊張しない「最初のひと言」大全』(Clover出版)など多数。
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