何世紀にもわたる人体の「自然発火」の歴史
17世紀、デンマークの解剖学専門家が、人間の自然発火の最初の事例を報告した。14世紀末のイタリアで、ポロヌス・ボルスティウス(Polonus Vorstius)という騎士が、ある晩ワインを飲んだあとに燃え上がったというものだ。
このように、人体自然発火現象はアルコールの過剰摂取と関連付けて論じられることもある。
イギリスの作家、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)は1853年の小説『荒涼館(Bleak House)』でこの現象を題材とし、論争に火をつけた。小説は、アルコール依存症のクルックという登場人物が自然に炎に包まれ、焼け死んでしまうという内容だった。
1895年に出版されたチャールズ・ディケンズの『荒涼館』の挿絵。クルックの死体が発見される様子が描かれている。
Charles Dickens' Bleak House, MacMillan and Co, New-York London 1895 page 402
この現象の原因については「神の訪問」、肥満、腸内ガスなどとする説も長年にわたって唱えられてきた。
しかし、バイアードによると、これらの説は科学的には意味はないという。
人体発火はもっともらしく、その証言には正確な点もあるが、それが自然に起こるというのは誤りだと彼は言う。
「確かに人体は燃えるが、自然発火するという証拠はまったくない」
実際、すべての事例で体の外側に火の元があるとバイヤードは付け加えた。最も一般的なのは、火のついたタバコ、ランプ、ろうそくだ。
人体はろうそくのようになることがある
人体の自然発火に関する科学的な説明として一般的なのは、人間がろうそくのように燃えるとする「ろうそく効果(芯燃焼)」という説だ。
体脂肪が炎の燃料となる。
Carlos Guimaraes / Getty Images
そのような状況を再現するために、1998年のBBCの番組で、イギリスの科学者たちが死んだブタを毛布に包んでから火をつけるという実験を行った。すると豚の足が燃え残り、まさに、人体の自然発火で多く報告されていることと同じ結果になった。
ろうそく効果とは、人体に火が付くと、自らの脂肪が燃料となって燃え続けるという説だ。毛布や衣服が、ろうそくの芯のような役割を果たす。
「毛布にくるまって酒を飲み、毛布に酒をこぼしたとする。それがガソリンなどのように燃焼促進剤の働きをする」とバイアードは言う。
「そのアルコールのプールにタバコを落としたとすると、発火して非常にゆっくりと燃えていく。脂肪は、実際にはかなり低い温度で燃焼することが分かっている」
手足には燃料となる脂肪が少ないため、炎に包まれて燃焼することがない。
「都市伝説が信じられているが、この背後にあるメカニズムは、『神の訪問』よりもずっと単純なものだ」とバイアードは述べた。
「人体自然発火」の謎を、科学はどう解き明かしたのか - Business Insider Japan
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