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MITSUI DESIGNTEC
ニコライ・バーグマンが箱根に構えるアトリエを、松任谷正隆と三井デザインテックの見月伸一が訪問。多拠点生活の魅力や可能性について語り合った。
豊かな自然が残る箱根の強羅エリアに、2022年「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」をオープンさせた、フラワーアーティストのニコライ・バーグマン。これに先立ち、2019年には約10ヘクタールの広大な敷地内に自らのアトリエが完成し、今では日本にいる時は週末のほとんどをここで過ごしているという。
バーグマン「フラワーアーティストとして大自然と関わり合う場所が欲しいと思って長らく探していました。ある日、強羅からの帰りにたまたま『FOR SALE』という看板が立てられたこの土地を見つけ、ピンときてすぐに電話したんです。オーナーとは感性が近いこともあり、無事に交渉成立。10年くらいかけて周囲も少しずつ買い足してきました」
<写真右から>
松任谷正隆 Masataka Matsutoya
1951年東京都生まれ。学生時代にキャラメル・ママを結成、その後アレンジャー・プロデューサーとして活躍。音楽学校を主宰し、モータージャーナリスト、エッセイストとしても活動中。
ニコライ・バーグマン Nicolai Bergmann
1976年デンマーク生まれ。98年より日本での活動を開始し「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」などを展開。2022年春に「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」を開業。
見月伸一 Shinichi Mitsuki
三井デザインテック フェロー/エグゼクティブクリエイティブディレクター。インテリアデザインのディレクションを統括し受賞歴多数。国際家具見本市のデザインコンペ審査員も務める。
箱根にはプライベートはもちろん、ホテルのプロジェクトなどでもしばしば訪れているという見月伸一。
見月「山を目の前にしたこのアトリエは本当に素晴らしい。箱根の大自然が、バーグマンさんのアトリエ空間の一部になっているんですよね。最近は世界的なインテリアの潮流でも、内部と外部が緩やかにつながるリラックス感の高い空間提案が増えています。今年のミラノデザインウィークでも、屋内外がクロスオーバーするプレゼンテーションが多く見られました。色や素材も自然を感じさせる豊潤なものへと変化してきています。パンデミックを経たことで、住まいや働く場でもますますウェルネスなライフスタイルへの期待が高まってきている気がしますね。ここはその理想型ではないでしょうか」
一方バーグマンとは久しぶりの再会だという松任谷正隆にとって、箱根はなじみ深い場所だという。
松任谷「車の仕事で箱根ターンパイクにはしょっちゅう来ていますし、小学生の時の修学旅行の思い出もある。ただ僕の中では、バーグマンさんとこの土地のイメージがすぐに結び付かなくて。箱根は江戸幕府の関所があった場所で、ここから眺める景色も実に日本的ですよね?」
バーグマン「デンマークには山がないんですよ。箱根の山にいるだけでワクワクするし、いろんなインスピレーションを受けています。ここには気持ちを切り替えに来ているんです。2~3泊して東京に戻るくらいのバランスがちょうどいい」
家具や小物から建材、キッチンまで、自ら手配したデンマークのもので統一したバーグマンのアトリエは上質な温もりにあふれている。
見月「空間とは環境とも言えますよね。そこでどういう気分で過ごし、リラックスしたいのか、クリエイティブに徹したいのか。そういった点までデザインされた空間であることが伝わってきます」
バーグマン「ありがとうございます。ハードワークが続いた後でも、ここで過ごすとすごくリフレッシュできる。でも、ずっと自然のど真ん中だとトゥーマッチ(笑)。都会での活気に満ちた暮らしと、自然の中での暮らしの両方があることで、クリエイティビティが保たれている気がします。独りで思考できるこのアトリエは私にとってとても大切な空間です」
松任谷「その感覚はわかるなあ。バーグマンさんみたいなライフスタイルにはとても憧れます。ただ、全く違うところに住んでみたいという気持ちはありつつ、今の家が快適すぎて。逗子の別荘を建て替える計画もありますが、少し先になりそうですね」
<写真>冬には欠かせない暖炉が設置された、箱根の山々を望むリビング空間。静かな存在感を放つアルネ・ヤコブセンの名作「エッグチェア」はレザーのパイピングが入った限定モデル。
見月「バーグマンさんはもし今の生活に飽きたらどうされますか?」
バーグマン「私は時々、環境を丸ごと変えたくなります。大きな変化は嫌いじゃないんです。この箱根の家は手放さないと思うけれど、東京の家は実は引っ越しの真っ最中。新しい状況から受け取るワクワクした気持ちが、新しい思考の原動力になるんですよね。たまに飽きないと次が生まれないと思います」
松任谷「僕も同感です。飽きるって人間の才能ですよね」
見月「そうですね。私も飽きるのとは少し違いますが、旅や仕事でいろいろな場所を訪れることが思考を切り替えるきっかけになっています」
松任谷「なるほど。ちなみにお二人は過ごす場所によって聴く音楽は変わりますか?」
見月「変わりますね。空間と選ぶ音楽は密接な関係がある気がします」
バーグマン「私は箱根に来ると朝はクラシック。あとはジャズかな。東京ではアップテンポな曲が多いです。コペンハーゲンに戻った時は、デンマーク語の曲を聴いていますね」
鼎談当日のBGM はデンマークのジャズ。アトリエのあまりの居心地の良さに時を忘れるほどだったが、2時間ほどで都心に戻れるのも箱根の魅力。最後にはガーデンズ内のカフェ「NOMU hakone」でデンマーク流のスイーツやコーヒーを堪能しながら、これからの暮らしやデザインの未来について熱く語り合った。
<写真右上>今年のミラノデザインウィークでのパオラレンティの展示。庭園につながるエリアに、屋内外を問わずにコーディネートできる家具が並ぶ。
<写真右下>三井デザインテックの銀座オフィス。都市と自然がクロスオーバーする、緑あふれるワークプレイス。
都市と自然が融合するクロスオーバーした日常へ - ELLE JAPAN
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