キリフリ自然学校のことを知ったのは、知人からもらった1冊の絵本「やくそく」がきっかけです。発達障害と診断された男の子とお母さんのお話です。
主人公のあゆくんは小さい頃から動き回る元気な子でしたが、小学校に入ると「多動」と見なされ、多感なことなどもあって適応できず、次第に学校に行くのがつらくなったのでした。シングルマザーのお母さんは気が気ではなく、あゆくんが何とか「普通」という枠の中に入ってくれないかと、次第に追い詰められた気持ちになります。そんな中で、お母さんはキリフリ自然学校のウェブサイトを見つけ、自然の中で生き生きと遊ぶ子どもたちを見て、あゆくんに「行ってみる?」と尋ねます。そこからあゆくんとお母さんの世界は百八十度変わるのです。
同自然学校は、栃木県日光市にある、自然を体験しながら遊んだりキャンプをしたりものづくりをしたりする場です。主宰者の金井聡代表にお話を伺いました。
(聞き手・文 海原純子)
急流と闘う
◇夢中で遊べる場、大人も一緒に
海原 ホームページには、瞳がきらきら光る子どもたちの姿と一緒に「『その人が持っている能力を120%活用できる社会』『みんながHappyで、一人ひとりがChallengeできる社会』を目指して、『アドベンチャー教育、フロー教育、リテラシー教育』の実践と発信を行っていきます」とあります。金井さんは、子どもの貧困を支援するNPOの職員をなさっているそうですが、この自然学校を立ち上げたきっかけなどを教えください。
金井 きっかけは、子どもたちのために体験の場をつくりたかったからです。ここでいう体験とは、夢中になったり没頭したりする体験、できるかどうか分からないけどやってみようと思う体験です。今、子どもを取り巻く環境はそんな体験が不足しているように思うのです。ただし、体験させればいいというものではありません。あくまで自主的な、つまり「やりたい!」との思いが前提です。そのためには、ある程度の自由が必要になります。その自由を求めて2015年に立ち上げました。
海原 どんなふうに運営し、スタッフは何人くらいいるのでしょうか?
夜の冒険
金井 子どもたちが自由に遊べる場をつくるというと格好いいですが、実際には葛藤の連続です。完全な自由というのは時間的にも物理的にも厳しいので、「ここまで」という線引きにいつも悩みながら運営しています。
スタッフは私だけです。他はボランティアで運営しています。このボランティアの役割は「ちょっと変わった大人」「ナナメの関係になれる大人」です。指導者でも管理者でもありません。一緒になって笑って走って悩んで悔しがる。その上で、子どもよりも子どもらしく遊んだり、「やりたい!」を主張したりするのが役割です。
自然の中で沢遊びやキャンプなどをする週末自然塾や、やることを自分で決められるレインボーパークなどもあります。週末自然塾は月1回行われ、会を重ねた最後にはオーバーナイトハイクなども行われます。
泥んこになって遊ぶ
◇過度な安全配慮はマイナス面も
海原 自然は優しいだけでなく、寒かったり暑かったり大変なこともあったりすると思います。常に危険と隣り合わせで、はらはらしませんか?
金井 子どもの行動は予定不調和・予測不能・想定外ということを前提に、安全管理には常に気を配っています。ただ、管理ばかりになってしまうと、運営している大人もつまらないものです。苦しくなります。経験則でしかないですが、子どもが自分のやりたいことをやっているときは大きなけがをしません。逆に、やりたくない、あるいはやるタイミングでないのに強制的にやらされている場合は、けがをしたり体調を崩したりします。それを考えると、やりたいことができる環境をいかにつくるかが、一番の安全管理かと思います。もちろん、自然環境的要素に関しては情報収集し、予測できる危険には対策を取っています。
海原 学校などではモンスターペアレントが問題になっていますが、そういう父母と出会うことは? 「危険ではないか」と言われたりしませんか?
金井 幸い、今のところそのような父母はいません。もしかしたら、そのような方は参加しても離れて行くのではないかと思います。
(2024/02/02 05:00)
発達障害の子も生き生きと~キリフリ自然学校の金井代表に聞く~ - 時事メディカル
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