米国は気候変動政策で脱炭素と経済との循環を生み出そうとしている。日米首脳会談の準備のために来日した政策実行のキーマンに要諦を聞いた。
ジョン・ポデスタ米大統領上級顧問(国際気候政策担当)は、バイデン政権でクリーンエネルギーの開発・導入を主導している。2024年3月に来日した同氏に、グリーン産業への投資を促すインフレ抑制法(IRA)や気候変動対策について聞いた。
22年8月に成立したIRAは、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)、水素などの脱炭素分野に約3690億ドル(約55兆円)を支援するもので、海外から米国に多くの投資を呼び込むなど成果を上げている。オバマ政権やクリントン政権の気候変動政策との違いは何か。
「最大の違いは、問題の解決に向けて“何をするのか”ではなく、“何を作るのか”を戦略のコンセプトにしたことだ」と、ポデスタ氏は話す。グリーンテクノロジーによる経済成長と雇用創出を掲げ、民間主導の取り組み、中でも製造分野の支援に注力した。
「IRA成立後に創出された雇用は27万5000件に達する。米国民はグリーンテクノロジーによって低炭素社会への移行と経済の豊かさを手に入れることに自信を持っている。今秋、大統領が入れ替わったとしても政策の流れが大きく変わることはない」と、同氏は強調する。
水素戦略は地域産業に焦点
注目すべきは、米国の水素戦略だ。23年6月、米エネルギー省(DOE)は国家クリーン水素戦略を発表、30年までに年間1000万tの水素を生産し、新たに10万件の雇用創出を狙う。50年までに5000万tの国内生産を目指す。
「水素戦略の要諦は、地域の産業構造と密接に結び付けること」と、ポデスタ氏は説明する。
地域に応じた戦略的支援を行うべく、米政府は23年10月、国内に7つの「水素ハブ」を選定した。例えば「メキシコ湾岸ハブ」では、テキサス州ヒューストン近郊の豊富な天然ガスと再エネ電力を活用し、CO2回収を伴う大規模な水素製造を計画している。一方、「カリフォルニアハブ」では地域のバイオマス資源を利用して水素を製造する。
「ロサンゼルスやサンフランシスコの港湾エリアは輸送部門のCO2排出による汚染が課題になっている。地域の再エネ資源で製造したグリーン水素を活用し、大型トラックなどの脱炭素化を進める」(ポデスタ氏)
米政府は7つの水素ハブに総計70億ドルの資金を供給し、官民合わせて約500億ドルの投資を引き出す狙いがある。30年の米国のクリーン水素生産目標の約3分の1、300万t以上を7拠点で生産し、年間2500万tのCO2削減を目指す。
米国の気候政策、雇用と自然が軸 - 日経BP
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