岐阜県可児市といえば、工業団地が集積した県内有数の製造業のまち。はたまた名古屋のベッドタウンというイメージが強いが、実は昔から農業が盛んで、おいしい野菜や米が作られてきた。人の営みに欠かせない食を支える農産物が充実し、豊かな自然に恵まれた環境が、市の掲げる「住みごこち一番・可児」の市民の暮らしやすさにつながっているようだ。
市内の土田地区、今渡地区など木曽川沿いの土は、御嶽山の火山灰が運ばれた肥沃(ひよく)な黒土に恵まれ、野菜作りに適しているという。土田地区の住民らで活動するボランティア団体「木曽川トリベール」は、農産物を通して地域の輪、人のつながりを深めたいと、地元農家の採れたて野菜を直売する「軽トラ市」を7月から始めようと、夏野菜の栽培などの準備を進めている。収穫した野菜は土付きのまま、軽トラックの荷台に積んで販売するのが最大の売り。代表の大島年男さん(72)は「生産者と消費者が互いに顔を見せ合い、会話を楽しみながら売り買いをする、高山市の朝市のような活気ある場にしたい」と意気込む。
市は、木曽川左岸の「木曽川渡し場遊歩道」を軸とし、川のほとりのにぎわいを創出しようと「かわまちづくり基本計画」を2016年度に策定し、その一環で2年前に日特スパークテックWKS(ワークス)パーク(かに木曽川左岸公園)が土田地区にオープンした。地域の活性化に同パークを活用しようと活動を始めたのが木曽川トリベールで、家族連れが楽しめるイベントを企画してきた。メンバーは、遊歩道内にある「かぐや姫の散歩道」の愛称で親しまれる竹林を整備するボランティア団体「木曽川左岸遊歩道友の会」の会員でもあり、手がける竹のオブジェも好評だ。7月27日に、パーク近くの空き地で初開催する「軽トラ市」(午前8時~同10時)の夜には、市民も制作に参加した竹灯ろうをパーク周辺に並べて観賞するイベントを計画をしている。「大切にしたいのは、人と人とのコミュニケーション。大勢の人に関わってもらうことで、まちの活気につなげたい」と大島さんは言う。
土田一帯は、伸びしろのある観光資源にも恵まれている。かぐや姫の散歩道は、時間帯によって光の差し込み方が変化する。インスタ映えすると交流サイト(SNS)で広まり、今では若者も訪れる新たな観光スポットとなった。鳩吹山は軽登山で人気を集め、麓には約10万株のカタクリが群生する可児川下流域自然公園がある。さらには、年間約160万人と県内有数の集客がある温泉などの複合リゾート施設「湯の華アイランド広場」もにぎわいをみせる。
市観光協会の呉本勝男会長は「可児市には山もあり川もあり、風光明媚(めいび)な場所。これからの観光施策で必要なのは持続可能性。ぎふワールド・ローズガーデンのバラをはじめとする『花のまち』をテーマにした観光を充実させていきたい」と思いを語る。
一方、市民の新たな憩いの場となっているのが、無印良品ヨシヅヤ可児店(可児市下恵土)内に昨年オープンした市立図書館分館の「カニミライブ図書館」だ。市が良品計画(東京都)と公民連携で整備を進めたもので、収納グッズの周辺にはインテリアに関する本、食材を売る一角には料理本と、無印良品の商品と関連付けて本が配置された新たなスタイルの図書館。買い物ついでに本を借りることができ、これまで図書館からは足が遠のいていた市民や子どもを連れた30、40代の女性の利用が多いという。司書の市原千恵さんは「幼い子どもを連れても気兼ねなく過ごせるようで、絵本の読み聞かせをする姿もみられる」と話す。
ボランティア団体などが活動を行えるスペースもあり、異世代が交流する地域の新たなコミュニティーの場となりつつある。
▽製造品出荷額 4852億円(2019年、県内3位)
【42市町村まるかじり】可児市 豊かな自然生かすまち「かぐや姫の散歩道」若者呼ぶ - 岐阜新聞
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