生物多様性の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」プロジェクトに取り組む群馬県みなかみ町は、日本自然保護協会(東京都)と新たに推進協議会を設け、同プロジェクトの本格稼働に向けて動き出した。今後は三菱地所(同)を含めた3者で昨年結んだ協定に基づき、生態系の保全や、生物多様性を評価する仕組みの開発に乗り出す。町の担当者は「漠然としたイメージではなく、科学的な根拠に基づいて『自然が豊か』だと言えるようにしたい」と意気込んでいる。
生物多様性の現状を把握するため、同町がこれまで実施してきた調査では、町の面積の52%を自然林が占め、約4900種の生物が生息していることが判明。昨年度の調査では、外来種の繁殖が進んでいることなども明らかになった。
これらのデータを踏まえ、町は今後、日本自然保護協会員とのミーティングや専門コンサルタント、大学教授らと毎月協議を実施。人間の営みの影響も含めた自然の豊かさを定量的に評価する基盤を確立する。
協議と並行して、町の生物多様性保全にも取り組む。昨年度はイヌワシの狩り場環境の整備を行っている赤谷の森や、旧千葉村の町有林で人工林の伐採を実施。「月夜野ホタルの里」の権現上池でのかいぼりや、ニホンジカの生息状況を調査した。本年度は人工林の伐採を引き続き実施し、搬出したスギやマツの活用方法を検討する。
ニホンジカは町全体では低密度であるものの、一部地域では高密度化しており、放置すれば深刻な食害につながる恐れがある。捕獲方法やその後の活用方法を検討し、低密度の状態を維持していく。財源には、三菱地所からの企業版ふるさと納税による寄付金6千万円を充てる。
ネイチャーポジティブは生物多様性の損失に歯止めをかけ、回復傾向に戻すことを意味する。しかし、生物多様性の保全を数値で客観的に評価する仕組みはまだ存在しておらず、同町でのプロジェクトを基に、自然の豊かさを定量的に評価する仕組みを開発することが目標の一つとなっている。町は14日、ユネスコエコパーク認定7周年に合わせ、町役場で宣言式を開く。
生物多様性の回復目指す「ネイチャーポジティブ」本格稼働へ 科学的な評価で自然の豊かさ示す 群馬・みなかみ町 - 株式会社 上毛新聞社
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