2024.06.17 (最終更新:2024.06.17)
モデル・俳優、自然保護活動家/華みき
モデルや俳優としてのキャリアを持つ華みきさんは、自然保護活動にも熱心に取り組んでいる。現在は沖縄の自然保護に力を注ぎ、ラジオのパーソナリティーやドキュメンタリーの制作を通じて自然環境の重要性を広めている。俳優として、そして自然保護活動家としての道のりと、その思いを聞いた。(聞き手 編集部・池田美樹)
華みき(はな・みき)
東京都出身。モデル・俳優、自然保護活動家。ヤンバルクイナ親善大使。文化学園大学国際文化学科を卒業後デビュー。芸能活動と並行して、映像作品による自然保護活動をおこなう。 2021年より沖縄の自然と文化の発信・プロデュースに努める。毎週木曜日午後9時よりFMやんばる「華のときめきラジオ」を放送中。「身近な自然を大切に次世代へ美しい自然環境をつなぐこと」を軸に活動している。
モデルから俳優へと重ねてきたキャリア
——華さんが俳優になったきっかけやこれまで印象に残った出来事について教えてください。
小さい頃から歌ったり踊ったりすることが好きで、子役になりたいと思っていました。しかし両親に大人になってからにしなさいと反対され、いつかチャンスがないかと待っていました。16歳のときに原宿でスカウトされてモデルになり、そこからキャリアを重ねました。
転機は音楽家の親友が亡くなったことです。1日に何時間も稽古を重ねる彼女を見ていたので、自分は命を無駄に生きていたのではないかと感じ、しばらく空虚さを感じる日々が続きました。
その時、先輩の俳優から橋口亮輔監督の映画「ぐるりのこと」を勧められてみたことが、本格的に俳優を志すきっかけとなりました。
これまでで印象に残っている役は、橋口監督作品のテレビドラマ「初情事まであと1時間」で演じた母親役です。
また、2023年末に演じた現代能楽劇「生田川」の主演、松風役も大きな挑戦でした。能楽はまだまだ勉強中ですが、日本の自然観を感じる部分が多く、伝統的なものの奥深さを感じています。
自然保護活動のベースは家族との登山の経験
——自然保護活動を始めたきっかけについて教えてください。
父が登山好きで、家族で南アルプスの山々を縦走することが幼少期の恒例行事でした。山での生活が自然の美しさや厳しさを教えてくれたことで、自然が好きな子どもになりました。私は学校にうまくなじめないところがあったのですが、山や川や空が自分を楽にしてくれる気がしました。
コロナ禍が始まる少し前から、富士山のネイチャーガイドのアシスタントを始めました。富士山の成り立ちや自然のことを学び、活動する中で、自然の重要性に改めて気づかされ、環境保全に目が向きました。
そのきっかけとなったのは、本栖湖畔の映画祭で司会を務めたことです。そのご縁で地元の猟師さんたちと知り合い、彼らの活動を通じて自然との関わり方を学びました。富士山の美しい風景や生態系の大切さを実感し、自然保護活動に対する意識を高めるきっかけとなりました。
——自然保護活動を具体的にはどのように始めましたか。
コロナ禍に突入し、できることが近所の散歩だけという状態になったとき、今、世界の人はどういう景色を見ているのだろうと思い、ドキュメンタリー作品の制作を始めました。「If we'd only see-みることができれば」という作品です。
初めて自分で編集し、2020年10月にリリースしました。日本と世界68組83人にオールリモートで参加してもらい、それぞれの視点で自然へのまなざしをリレー形式でつづっています。
2作目は沖縄県与那国島に伝わる民謡を追ったもので、「ハララルデ~与那国を歩く~」という作品です。
沖縄ラジオの制作で、2021年度の「沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業(文化芸術の魅力発信応援プログラム)」に採択され、私が監督として2022年3月にリリースしました。与那国の心、伝統のわらべうたを後の世に伝えるべく録音に残した與那覇ファミリーの思いを探るドキュメンタリーです。
亡き祖母が紡いでくれた沖縄との縁
——最近は沖縄で多く活動されています。そのきっかけや現在取り組んでいることについて教えてください。
沖縄との縁は、10歳のときに、祖母が平和教育のために連れて行ってくれたことがきっかけです。ひめゆり平和祈念資料館を訪れ、その時に見聞きしたサトウキビ畑やガマ(自然洞窟)の話が強く心に残っています。
大人になってからは、観光やレジャーで沖縄に行くことはなかったのですが、その体験があったことで、平和や沖縄のために何かできたらという思いがずっとあり、ラジオ番組への出演オファーを通じて再び縁が深まりました。
2021年に沖縄でラジオ出演を始め、現在はFMやんばるで毎週木曜日の午後9時に「華のときめきラジオ」を放送しています。このラジオ放送を通じて、沖縄の自然や文化について学びながら発信し、地域の人々と交流を深めることができました。
2023年9月にはNPO法人「やんばる・地域活性サポートセンター」から「ヤンバルクイナ親善大使」に任命され、ヤンバルクイナをはじめとする希少動植物の保護活動に取り組んでいます。
この保護活動を通じて、世界自然遺産でもある沖縄のやんばる地域(沖縄本島北部の国頭村、大宜味村、東村の3村を合わせた地域のこと)の自然環境の重要性を再認識しました。このことをより多くの人に知っていただけるよう、様々な形でPRしています。
身近な地域の自然を大切にしてほしい
社会が多様化し、家族もさまざまな形のある現代だからこそ、俳優としてコメディーからシリアスなものまで、新しい女性像を演じてみたいと思っています。自然保護活動では、地域に還元できるよう、自然の守り手を増やす活動にも取り組みたいと考えています。
具体的には、私が得意な分野であるアートや音楽、ドキュメンタリーといった方法を通じて、世界自然遺産となったやんばるの魅力を届けるプロジェクトを構想中です。
昨年、やんばる地域の子どもたちと一緒に「やんばるの森とこどもたち」という創作劇を作りました。子どもたちがやんばるで暮らす日々と、やんばるの森の生き物たちの声を拾った作品です。このように、地域の自然と人々を次世代につなげていく活動を続けていきたいと思っています。
——自然保護活動を通じて特に伝えたいことは何でしょうか。
ラジオを聞いた方やドキュメンタリーを見た人から、時折「活動のお手伝いをしたい」という声が届くことがあります。そういった人には、まず身近な地域の自然を知り、大好きな場所を見つけていただき、それを大切にしてほしいとお答えしています。
今いるところを大事にすること、その輪が広がることが、世界中が豊かになっていくことにつながります。知らない地域や興味を持った地域のことを学ぶのも素晴らしいことですが、すぐ目の前に大切なものがあるかもしれないということを伝えたいのです。身近な自然は、前の世代から受け継がれてきたからこそ美しく感じられるのだと思います。
ネイティブアメリカンの言葉で「7世代先のことを考える」というものがありますが、日本にも、次に使う人のことを考えるという考え方がありますよね。そういった気持ちを大切にするようなつながりを作っていきたいと思います。
人との出会いに生かされてきたので、これからも一期一会を大切に、素敵な循環を生んでいきたいです。
朝日新聞SDGs ACTION! 契約編集者。株式会社マガジンハウスで『Olive』『Hanako』『anan』『クロワッサン』などの雑誌編集者、米国テック会社のニュース編集者を経てフリーランスに。ウェルビーイング、テクノロジー、女性の働き方、旅などを主な取材テーマとする。
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