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Sunday, June 16, 2024

企業の自然保全に「証明書」 - 日経BP

「自然共生サイト」の認定が法制化され、企業に認定書や証明書が発行される。海外で始まった生物多様性クレジット売買の動きに遅れない備えが必要だ。

 2024年4月、企業による生物多様性の保全地域「自然共生サイト」の認定を法制化する「生物多様性増進活動促進法」が成立した。

 自然共生サイトとは、国連が定める生物多様性の世界目標の1つ、「陸と海の30%保全」(30by30)に貢献する地域のことだ。国連は保護区だけでなく、企業が所有・管理する緑地など「民間と連携した自然環境保全(OECM)」地域も該当するとしている。このため日本政府はこうした地域を23年度から「自然共生サイト」として認定。日本製紙やトヨタ自動車の社有林や、サントリーグループの「天然水の森」など既に184カ所が認定を受けた。

 法制化で自然共生サイトに国のお墨付きを与え、農地や都市での活動も進めやすくした。国は認定地を順次、国連のOECMに登録していく。

 ここで課題になるのが企業に認定のインセンティブをどう与えるかだ。認定地が本業と関わる企業は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)開示で世界目標への貢献とビジネス機会を説明しやすい。認定地から産出される製品のブランド価値も高められる可能性がある。

 一方、そうでない企業や、所有・管理はしないが自然共生サイトに資金や技術、人材を提供する企業もある。国はこうした企業に支援証明書を発行する制度設計を進めている。24年度中に試行し、25年度から導入する。支援した土地の面積や支援内容(資金、人材、技術)、支援がもたらすインパクト、世界目標への貢献、本業との関係を記載し、TNFD開示で活用してもらうことを狙う。

■「自然共生サイト」の価値を示す仕組み

<span style="font-size: 1.2em;">■「自然共生サイト」の価値を示す仕組み</span>

企業による生物多様性の保全地域「自然共生サイト」に対し、認定書や支援証明書が国から発行される
(出所:環境省の資料を基に日経ESG作成)

英仏は生物多様性クレジット

 当初国は認定地の自然の価値を切り出し、市場で売買するクレジット制度をつくることを検討した。だが価値化が難しいとして見送り、認定書や支援証明書発行に切り替えた。

 片や海外では生物多様性クレジットが実用化されている。英国は開発地の生物多様性の価値を定量化し、開発前より10%向上させる「生物多様性ネットゲイン」を23年11月から順次義務化。達成できない企業に国が用意するクレジット購入を求める。英仏政府は生物多様性クレジット市場に資金を呼び込むイニシアチブを発足、クレジット制度創設の国際諮問パネルも立ち上げた。

 「国際的に認知されない支援証明書は魅力的でない」との企業の声も聞かれる。企業は自然共生サイトを通じて生物多様性の価値を評価し、将来国際ルールになるであろうクレジット制度に備える必要がある。

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