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Friday, June 11, 2021

自然豊か 西の軽井沢 - 読売新聞

 四季折々の大自然やひるぜんやきそばなどのご当地グルメが人気の蒜山高原(真庭市)。年間200万人以上が訪れる県内屈指の観光地として広く知られる一方、戦前・戦後は国策に翻弄ほんろうされた歴史があるなど、様々な表情を持つ。蒜山の歩みを振り返りながら、その魅力を探る。(根本博行)

 青空にぽっかり浮かぶ白い雲と、のんびり草をむジャージー牛――。鳥取県境に連なる蒜山三座(1202~1100メートル)の麓に東西20キロ、南北5キロにわたって広がる蒜山高原は、こうした牧歌的な景色が訪れる人を魅了する。

 雄大な自然に加え、観光の中心の三木ヶ原には、高さ50メートルの観覧車が目を引くレジャー施設「ヒルゼン高原センター」やホテル、ワイナリーなどの施設が立ち並ぶ。人気スポットとしてすっかり定着した蒜山高原。その観光地としての歴史は、戦後間もなく始まった。

 1950年代初め、葉タバコ農家が目立つ一帯に、観光振興の風が吹いた。55年、当時の川上村の村長が、大スター・鶴田浩二出演の松竹映画「応仁絵巻 吉野の盗賊」のロケを誘致。雄大な草原に300頭を超える馬と、野武士姿の出演者が合戦を繰り広げる大迫力の映像が公開されると、全国で話題となり、「蒜山」の名前が各地で知られ始めた。

 この頃から、「西の軽井沢」の名付け親とされる三木行治知事(当時)の主導で、観光開発が本格化する。蒜山としては初の観光施設となる県営キャンプ場がオープンしたほか、宿泊施設なども次々と開業した。

 自動車社会の到来も追い風となった。70年に鳥取県・鏡ヶ成とを結ぶ蒜山大山スカイラインが、75年には中国自動車道の落合インターチェンジまでの区間が相次いで開通。京阪神や県南を中心に、観光客が飛躍的に増えていった。

 バブル経済の崩壊やリーマン・ショックなどの逆風もあったが、2010年頃には毎年250万人前後が訪れていた蒜山高原。だが、観光客が無料の鳥取自動車道や山陰自動車道を利用し分散するなどした影響で、19年には223万人に減少するなどし、新たな誘客策が求められていた。

 そんな中、観光の新たな起爆剤として注目されるのが、7月にオープン予定の「GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)」だ。パビリオン棟(愛称・風の葉)とミュージアム、サイクリングセンターを備えた複合施設で、いずれも次世代の建材「CLT」(直交集成板)を使っている。

 それぞれ、国立競技場を手がけた建築家の隈研吾さんの設計監修で、風の葉とミュージアムは、東京・晴海から移築した。コンクリート製と違い、木造は再生できることを具現化する真庭市のプロジェクトで、観光客に木材のサスティナビリティー(持続可能性)もアピールするという。

 風の葉はCLT360枚を重ね合わせて建てられており、隈さんの<アート作品>として雨の日も内部から鑑賞できる。また、ミュージアムはワークショップも開催できるなど屋内観光に対応しており、屋外型のレクリエーションが多い蒜山にあって、天候に左右されない施設として期待が高まる。

 蒜山観光協会の亀山尚事務局長(36)は「この施設を雨の日も有効に活用し、蒜山の魅力を向上させたい」と意気込む。

       ◇

 ニュースのポイントを解き明かす「New門@岡山」6月シリーズは、「蒜山高原」をテーマに5回にわたって掲載します。

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