いったい、どれほどの生き物たちとともに生きているのだろう。天に広がる枝には着生植物が絡み付き、太い幹にはつる植物がはい上る。事もなげに巨木は共生のありようを示す。
岐阜県飛騨市河合町と大野郡白川村境にある天生峠一帯の天生県立自然公園には、人の手がほとんど入っていない天然林やブナの原生林が残る。初夏に向けてはブナやカツラの巨木を覆うように茂る葉が青々と輝き、深い森の活力を感じさせる一方で若葉を通して差し込む光は優しく、気持ちを和らげる。
公園は標高1289メートルの天生峠辺りの高地にあり、森の入り口となる峠から鳥や虫の鳴き声に励まされるようにして起伏のある山道をしばらく行くと湿原が見える。
天生湿原と呼ばれる高層湿原で標高約1400メートルにあり、湿原の周囲に設けられた木道を歩くと季節ごとに多様な植物が見られる。6月には淡い白色の花をつけたコバイケイソウが湿原を囲み、足元にはラショウモンカズラやミツガシワのかれんな花が咲く。初夏はニッコウキスゲやササユリの鮮やかな花が湿原を彩り、9月まで多くの種類の植物が花を付ける。その後は紅葉が湿原と森を飾る。
湿原を抜け、森で目にするのがブナとカツラ、トチノキの巨木。さらに木々を見上げながら進むと「カツラ門」と言われるカツラの巨木群がある。まさに門のようにカツラの大木が並ぶ。自然の造形による門が、広葉樹の森を行く人たちを迎えているようだ。
木の国岐阜ならではの姿を見せる巨木群。深山に分け入って出合う巨木には、深山幽谷という言葉を思い起こす。悠々と立つ巨木はさまざまな生き物のよりどころとなっており、生命感にあふれる。
この天生の森は古くからの伝説が残る。よく語られるのが止利仏師(とりぶっし)にまつわる話。止利仏師は飛鳥時代の仏師で、仏像にする木材を求めて天生を訪れた都の若者と土地の娘との間に生まれたとされ、名工となって法隆寺の釈迦(しゃか)三尊像を彫ったという。伝説もまた、森が持つ魅力の一つだろう。
【天生県立自然公園】 住所=飛騨市河合町天生。交通=国道360号の天生峠頂上近くに駐車場がある。車では飛騨市古川町中心部から約1時間、大野郡白川村からは約30分。同国道は冬期通行止めとなる。飛騨市と白川村でつくる天生県立自然公園協議会が入山時に森林環境整備推進協力金として1人500円の協力を呼び掛けている。問い合わせ=天生県立自然公園協議会事務局(飛騨市河合振興事務所内)、電話0577(65)2221。
カテゴリ: おでかけ
「深山幽谷」心安らぐ雄大な自然 天生県立自然公園(岐阜県飛騨市・白川村) - 岐阜新聞
Read More
No comments:
Post a Comment