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Thursday, September 30, 2021

自然の色と手仕事の魅力を次世代に~草木染で深める学び - 読売新聞

  銀鼠(ぎんねず)梅鼠(うめねず)胡桃茶(くるみちゃ)朽葉色(くちばいろ) ――。「 四十八茶(しじゅうはっちゃ)百鼠(ひゃくねずみ) 」と表現されるほど微妙な色の違いを見分ける日本人の色彩感覚は、古代から草木染に親しむ中で培われたと言われる。植物で染めた多様な色は貴人のみならず江戸期の庶民に愛され、農村で自家用の織物に使われてきたが、その行方は心もとない。失われつつある「自然の色」と手仕事の豊かさを、次世代に伝えようという取り組みも始まっている。

 今夏、東京・世田谷区の住宅街で、高校生たちが草木染と機織りを体験する会が開かれた。京都を拠点に植物染料による染織を手がける「アトリエシムラ」が、公立高校の探究的な授業などを支援するNPO法人「青春基地」と共催した。

 高校生向けの体験は初めての試みで、初回は多数の応募者から抽選で選ばれた都内や神奈川、千葉県の女子生徒計5人が参加した。まず工房のスタッフから、古来、様々な樹木の枝や実などが様々な染料になってきたことや、絹糸をつくる工程などを、実際の植物や繭を手にとりながら学ぶ。色鮮やかな花びらで色は染まらず、開花前の木々の枝や幹を煮出すと美しい色が出る、という説明に生徒たちは熱心に聞き入っていた。

 この日使った染料は、 (くず) 。河川敷などにも自生するなじみ深い植物だ。大ぶりの緑の葉を鍋で煮出すと、透明な (あめ) 色の液が抽出される。そこに白い糸を浸すと――。目の覚めるようなレモン色に染まっていく過程に、驚きの声が上がった。

 ベランダで風を通した糸には、さらに色を定着させる「媒染」の作業が必要だ。鉄の溶液に浸した糸束はグレーがかった落ち着いた色合いに、銅の溶液に浸した糸束は青みがかった爽やかな黄色に変化した。

 「身近な植物で、こんなにきれいな色に染まるとは。媒染で色が変わるのも面白い」と、高校3年の女子生徒は声を弾ませた。午後からは、自分たちで染めた糸を使い、小型の織機で布を織る体験も行われた。「既製の服しか見たことがないので、糸や布がどんなふうにつくられるのか初めて知った」と話す高2の生徒もいた。

 生徒を引率した千葉県立小金高校の 椿(つばき)仁三千(やすみち) 教諭は「染織は自然の恵みや奥深さだけでなく、伝統工芸などの日本文化に触れることができる。いま求められている探究的な学習には最適の教材だと思う」と話した。

 アトリエシムラは 紬織(つむぎおり) の人間国宝、志村ふくみさんの孫、昌司さんが代表を務め、京都や和歌山の小学校でも (あかね) や梅などによる染色体験の機会を提供してきた。その背景には、伝統工芸や生活に根ざした手仕事が衰退し、日本の自然や文化への関心も薄れている現状への危機感がある。

 97歳を迎えた志村さんは「草木の命をいただく」と自然への畏敬の念を表現し、一貫して植物染料で糸を染め、様々な織物を生み出してきた。故郷の琵琶湖や源氏物語などを題材とするほか、現代アートに触発された斬新な作品もある。「高校生など若い世代に、自らの思いを表現できる織物の魅力も知ってもらいたい」と昌司さんは言う。

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