イタリア・ミラノで9月、「ミラノ・デザインウィーク」が開かれ、ファッションブランドも新作家具を発表した。在宅時間が増えた新しい生活スタイルに合わせ、自然からインスピレーションを得た居心地の良い住まいの提案が目立った。例年4月に開催されるが、昨年はコロナ禍で中止。今年は秋にずれ込んだものの、久しぶりに復活したデザインウィークを楽しむ人たちで、街に活気が戻った。
ミラノ市内各所で開かれるデザインイベント「フォーリサローネ」では、多くのファッションブランドが新作家具を発表した。
アルマーニ・カーザは「家」の役割に向き合い、日常生活の場と仕事の拠点として、バランスのとれた空間づくりを試みた。静かなビーチを思わせる砂色や水色のカラーリング、繊細なアニマル柄の家具や小物を配置した空間は、ロックダウンで恋い焦がれた外の自然と一体化するようだ。曲線が身体を包むソファや仕事用デスクのほか、アウトドアを楽しむバーベキューやガーデニングのセットなどもそろえた。
ヴェルサーチェ・ホームは、ミラノのデザインデュオ、ロベルト・パロンバ、ルドヴィカ・セラフィノと協業し、クリーンで軽やかな印象にまとめた。ピンク色のベッドルームには、ブランドのシンボルであるギリシャ装飾の雷文をちりばめたベッドリネンや服、ラインストーンで飾ったカップ、脱ぎ捨てたサンダルなどが置かれ、若い女性のいきいきとした生活シーンが浮かび上がる。
夕暮れ色のチェア ゆらめく明かり
デザインウィークの中核となる世界最大級のインテリア見本市「ミラノ・サローネ国際家具見本市」は、規模を縮小した今回限りの特別展「スーパーサローネ」として開かれ、会期中の来場者は6万人を超えた。
ミッソーニ・ホームが発表した新作木製チェア「ミス・ウッド」は、夕暮れの空を映し出すように、赤やオレンジなどの色をグラデーションをつけて塗装した。屋外用のカウチソファなども充実していた。
大陸間の移動が難しいなか、果敢に出展した日本企業もあった。横浜市のポータブル照明器具メーカー、アンビエンテックの新作「ヒム」は、明かりがキャンドルのようにゆらぎ、吹き消したように瞬きながら消えるのが特徴。炎をかたどったレンズに下から光を投射し、レンズと一体化した振り子の動きでゆらぎを演出した。展示を見ていたミラノ在住のデザイナーは「シンプルでコンパクトな中に、技術力と繊細な職人技が詰まっているのが日本らしい」と興味深そうに話した。
一方、大阪市の高機能材料メーカー日東電工は、フォーリサローネで大規模な展示を行い、新しい光制御技術「レイクレア」を披露した。
透明なフィルムをガラスやアクリル板に貼り、光源を組み合わせることで、フィルムを貼った面だけを光らせることができる。加工したパネルを重ね、光の森に迷い込むような神秘的で浮遊感ある空間を作り出した。来場したイタリア人建築家は「やさしく柔らかい光は、まさに日本の光と空間だ」と印象を語った。
技術力を底に秘め、シンプルな中に優しさを醸しだす。そんなメイド・イン・ジャパンのイメージが、確立してきている。
ジャーナリスト・高橋恵
ミッソーニ・ホーム以外、写真はブランド提供
自然取り込み、在宅を心地よく 2年半ぶり「ミラノ・デザインウィーク」 - 朝日新聞社
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