「オンラインだけでは、深い交流はできない。(対面と)双方の利点を生かしたハイブリッドの研修が大切になってくる」。群馬県甘楽町のNPO法人「自然塾寺子屋」で、国際協力機構(JICA)の海外研修員受け入れや青年海外協力隊の派遣前研修などで農業文化を伝えてきた。理事長の矢島亮一さん(57)は新型コロナウイルスの影響で海外と往来ができない中、アフターコロナを見据える。
高崎市出身の矢島さんは東京農業大卒業後、カナダの山岳ガイドなどを経て、三十四歳の時に同協力隊の村落開発普及員として中米パナマの山間地へ。初めて隊員が入る人口数十人の小さな集落。ほぼ自給自足の生活だが、イメージした貧しさは感じなかった。
家族や地域のつながりが強く、助け合いながら生活する人々。食べ物に困っていると、貴重な鶏の唐揚げを食べさせてくれた。「豊かさとは何かを考えさせられた」と振り返る。
二年の任期が終わり、国際協力を通じた地域振興をしようと、二〇〇一年に「自然塾寺子屋」を設立。〇三年にNPO法人化した。これまでに中南米やアフリカ、アジアなど約五十カ国の行政職員や生産者など、約計六百人を受け入れた。寺子屋で学んだ同協力隊員は約千人に上る。
農業関係者でつくる「甘楽富岡農村大学校」の地元農家などが研修先となり、生産技術や農業経営を教える。「農家のおばあちゃんが『今度はブルキナファソから来るのかい』と、日本ではなじみのないアフリカの国名も、自然と口に出るようになった」という。
しかし、コロナの感染が拡大。二〇年からは国境をまたぐ研修ができず、手探りでオンラインを活用した研修を始めた。農家や行政、市場などの関係者のインタビュー動画を制作し、外国語に翻訳。視聴後はオンラインで意見交換もする。中南米、アフリカの約三十カ国計百人が研修を受けた。
必要に迫られて始まったが、通訳の時間を省けるなど効率的に学べる利点にも気付いた。コロナ禍後は来日前に動画を見てもらうことも構想する。
外国人労働者のサポート事業にも乗りだした。「地域の文化や伝統、人とのつながりを大事にしながらグローバルタウンを目指し、魅力ある町づくりのお手伝いをしたい。ローカルの取り組みがあってこそ、グローバルにつながっていく」。群馬県から世界へ目を向け続ける。(安永陽祐)
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