栄養価が高く、古くから世界中で料理に使われているゴマ。かつては全国各地で栽培されていたが、手間がかかると敬遠され、国内で流通する99・9%以上が輸入品だ。埼玉県日高市で農園を営む鈴木香純さん(27)は「国産ゴマを広めたい」と、在来種の自然栽培に取り組む。活動の原点は、自らの拒食体験にある。(地方部 中谷和義)
奥武蔵の山々を望む日高市高萩地区。鈴木さんは5月に始まる「金ごま」の種まきに向け、耕作放棄地だった畑で小麦を育てている。別の作物を栽培することで、土が軟らかくなるという。畑を耕したり、草を取ったりする作業は、できる限り機械に頼る。
ゴマ栽培には手間が欠かせない。発芽から間もない一本一本を指で確認し、間引きする。8月中旬からの収穫では、暑さの中、高さ2メートルほどに伸びた茎を根元から刈り取り、ビニールハウスに運んで追熟させる。
脱穀機を使ってさやから実を取り出し、ふるいにかけてごみを除く。こうして出来上がるゴマの味わいは格別だ。「小粒だけど油分が多い。味が濃厚で、香りとのバランスもいいんです」
東京都で生まれ育ち、農業と縁はなかった。きっかけは高校時代に遡る。
おしゃれが大好きで、ファッション誌を参考にカラーコンタクトを入れたり、髪を巻いたりしていた。ある時ふと、自分と同じ身長1メートル51ほどのモデルの体重が、10キロ近くも少ないことに気づいた。
「私も痩せてきれいになりたい」。自己流のダイエットで米、パンなどの炭水化物を減らすことにした。午後6時以降は炭水化物を食べない。母親が作ってくれる昼の弁当も食べずに捨てる――と、どんどん厳しい制限を課した。目標の38キロまで減らしても満足できず、エネルギー不足でふらふらしながらも高校3年の頃には33キロまで落ちた。
そんな時、アルバイト先で栄養学を学ぶ大学院生と知り合い、「たんぱく質やビタミンをバランスよく取れば太らないよ」と教わった。インターネットで調べるうちに、自然食品や有機農法に興味を持つようになった。
高校卒業後、歯科衛生士専門学校に進んだ。勉強に身が入らず、今度は過食が始まった。朝起きると、おなかがすいて我慢ができない。徐々に体重が増え、57、58キロになった。「食べ物のせいで何もできない。食と徹底的に向き合おう」と決意し、1年半で退学した。
国産ゴマを自然栽培…自身の拒食体験踏まえ - 読売新聞
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