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Thursday, February 24, 2022

【島を歩く 日本を見る】自然に宿る神の息吹を感じて 神津島(東京都神津島村) - 産経ニュース

島を歩く 日本を見る

神津島は古来、黒曜石の産地として知られる。天上山の展望は新東京百景の一つ
神津島は古来、黒曜石の産地として知られる。天上山の展望は新東京百景の一つ

東京都心の南方約180キロに、〝星降る白い島〟がある。伊豆諸島の中間に位置する神津(こうづ)島は、全島が富士箱根伊豆国立公園に属し、島の中央にそびえる標高572メートルの天上山(てんじょうさん)は特別保護地区に指定されている。

『続日本後紀』や『三宅記』によれば、天上山が最後に噴火したのは承和5(838)年頃といわれる。神話では、伊豆諸島の島々の神が天上山に集まって会議をするとされ、「神集(かみあつめの)島」とも呼ばれる。

神津島観光協会登録ガイドの前田正代さんと一緒に、白島登山口から天上山に登った。途中、シイノキやタブノキ、ヤブツバキなどの木々が作るトンネル状の道を歩き、赤い実をつけたミヤマシキミやサルトリイバラなどを観察した。天上山は「花の百名山」にも名を連ねており、白い山がかれんな衣装をまとうように、四季折々の花々が咲き誇る。

山頂部は比較的平坦で、山全体が台地形であることがわかる。神話の会議場とされる神聖な「不入(はいらない)ガ沢」を含めて十数カ所の噴火口跡があり、雨乞い神事をしたと伝わる不動池など大小多くの池もある。岩石が転がったガレ場、強風など樹木が生育しにくい環境に形成された風衝低木林、湿原などの多様な自然の姿とも出合う。

白い流紋岩が風化してできた表砂漠、裏砂漠と呼ばれる2つの砂漠地帯が広がる景観は、幽玄な雰囲気がただよう。この砂漠に降った雨は、大地を通って伏流水となり、島民に貴重な水資源を与えてきたという。前田さんは、「古来、島民は天上山を信仰対象としてきた。修験者も来ていた」という。

天上山の裏砂漠。初夏はオオシマツツジが咲く
天上山の裏砂漠。初夏はオオシマツツジが咲く

天上山や集落などの島内には小さなほこらや神社仏閣が多い。また、北西部の長浜海岸にある阿波命(あわのみこと)神社は、境内に白い砂が敷かれ、例祭の時には、海で平たい石を拾い、その上に砂利を盛った「潮花(しおばな)」を鳥居に供える風習が残る。

島は星空も美しい。令和2年12月、国際ダークスカイ協会により日本で2番目の「星空保護区」に認定され、「ダークスカイ・アイランド」という呼称も認められた。認定には厳格な基準を満たすことに加え、暗い夜空を保護する取り組みや地域の理解などが求められる。

島は東京都と協力し、島内の街灯を夜空に光がもれない光害対策型に取り換え、星空展望台を数カ所設置した。夜空を語れる島民による「星空ガイド」も活躍中だ。白い島に降り注ぐような星空は、国内随一の自然景観となるだろう。

大地、空、海。壮大な自然の中を歩けば、たしかに人知を超えた神々しい存在が宿っているような気がした。

■アクセス

東京の竹芝桟橋から高速ジェット船と大型客船が運航している。調布飛行場からの空路もある

■プロフィル

小林希(こばやし・のぞみ) 昭和57年生まれ、東京都出身。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後に『恋する旅女、世界をゆく―29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマにしている。これまで世界60カ国、日本の離島は100島を巡った。

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