静岡県立大が2022年度から、グローバル地域センター(静岡市葵区)内の地震予知部門を自然災害部門に改組することが20日までに分かった。尾池和夫学長が静岡新聞社の取材に応じ、明らかにした。地震だけにとどまらず、津波や火山、風水害などさまざまな自然災害に関する研究を行い、県民に分かりやすく情報発信する。看護学部や薬学部などとも連携し、災害時に活動できる人材育成に取り組む。
地震予知部門には現在、特任准教授2人が在籍している。新たに海洋研究開発機構地震津波予測研究開発センター長で南海トラフ巨大地震の発生過程を研究する堀高峰氏、静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授らを客員教授として招聘(しょうへい)する。火山学の第一人者にも声を掛けている。地震学が専門の尾池学長、地球流体力学の酒井敏副学長も名を連ねる。
研究活動がメインで成果を講演会で披露するほか、さまざまな災害に関する県民への情報発信を強化する。
尾池学長は「県立の大学として県民の安全を守るための研究や情報発信を行いたい」との方針を示す。
静岡新聞社のインタビューに20日までに応じた県立大の尾池和夫学長の一問一答は次の通り。
―自然災害部門創設の狙いは。
「県は健康長寿の社会づくりを推進している。これに『安全』を加えたい。熱海市伊豆山で発生したような災害もある。自然災害で県民が亡くなることを防ぎたい。気象庁や研究機関が持っているさまざまなデータを県民に分かりやすく伝え、防災意識の向上に貢献したい」
―静岡県の自然環境の特徴は。
「地質学的にも地球物理学的にもおもしろい。特に河川。天竜川は直線的に流れ、大井川は上流部がくねくね曲がっている。いずれも活断層の影響。富士川は大地震時、富士山の土砂を南海トラフに運び込む。プレート運動の関係で狩野川は太平洋側で唯一、北向きに流れる。本県は『川の博物館』と言っていい」
―自然環境と防災をどう結び付けるか。
「川は駿河湾や遠州灘に流れ込み、その中間に平野ができ人が住む。山と川とまちと海。この関連性をしっかり押さえることが、防災の意味でも暮らしや歴史、文化を理解する意味でも大事。ストーリー性を持って本県の自然災害をとらえ、県民に情報発信したい」
―南海トラフ巨大地震の2038年発生説を唱えている。
「一つは統計モデルからの予測。地震の活動期と静穏期で地震の発生の仕方に特徴があり、現在の活動期にあてはめると、南海トラフ巨大地震の発生時期が予測できる。高知県の室津港は隆起と沈降を規則的に繰り返し、宝永地震以降の記録が3回取れている。この記録に基づくと跳ね上がり(地震発生)は38年ごろになる。そこまで分かっているのであれば、『言わんことはないやろ』と思って発言している」
(聞き手=社会部・武田愛一郎)
静岡県立大、自然災害研究強化 2022年度改組へ 地震以外も幅広く発信|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞
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