
奈良時代の開湯以来、湯治、観光の地として栄えた箱根。明治時代に入ると、東京へ移り住んだ新政府の要人たちの滞在も目立つようになった。
その箱根の玄関口・箱根湯本の一角に創業1625(寛永2)年の老舗旅館「萬翠楼 福住」は立つ。客室を備えた3棟のうち、萬翠楼と金泉楼は明治初期に建てられた3階建ての
「萬翠楼という名前は、木戸様からいただきました。箱根は緑が美しい土地ということで、そう名付けられたのだと思います」と解説するのは、16代目主人の治彦さん。木戸様とは維新の三傑の一人、木戸
木戸が「萬翠楼」の名を贈り、10代目主人が完成した1棟にその名を冠した。その後、「萬翠楼」は宿の総称として使われていく。
16代目主人は、明治棟と呼ばれる2棟の違いについて、「先に完成した金泉楼には、和洋折衷の華やかな意匠が取り入れられていますが、後にできた萬翠楼は自然の造形を生かした意匠が特徴的。両棟には若さと円熟という印象の違いがあります」と説明する。
二度のもらい火があり、10代目主人が明治の要人らを迎えるために三度目の正直で建て直したのが、萬翠楼と金泉楼なのだという。萬翠楼1階の15号室は、10畳+8畳+6畳+6畳+広縁という間取りだが、10畳の大広間は、松林
1階から2階に向かう階段は洋風のらせん階段で、階段のステップ部分は大きな一枚板を分割したものという。また、2階の25号室には、屋久杉の欄間や四方の
「天井画の華やかさばかりが注目されますが、全体的に、今では手に入らないような貴重な材ばかりが使われています。細かい丁寧な仕事ぶりにも着目していただきたいですね」と16代目主人は語る。
金泉楼1階の部屋に宿泊。華やかな夕食に舌鼓を打ち、宿自慢の湯も堪能。宿の前を流れる早川のせせらぎに耳を澄まし、心を落ち着けてから床に入った。
翌日のチェックアウト後は、車で箱根観光に。「片田舎の一介の宿の主人(10代目)が明治期にこういう建物を建てることができたのも、日本や日本人の民度が当時から高かったということの現れ。それを感じ取っていただければうれしいですね」。16代目主人の言葉が、耳に残った。
文/松本浩行 写真/坂田隆
箱根湯本温泉 萬翠楼 福住
住所:神奈川県箱根町湯本643
電話:0460・85・5531
料金:2人1室利用の場合大人1人、1泊2食2万2150円から。
客室:バス・トイレ付き10畳+8畳など(全15室)
交通:箱根登山鉄道箱根湯本駅から徒歩5分/小田原厚木道路箱根口ICから3キロ
(月刊「旅行読売」2022年6月号から)
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【文化財の宿に泊まる】自然との協調美、息をのむ天井画 - 読売新聞オンライン
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