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Wednesday, August 24, 2022

自然エネルギーをいろいろ活用する家。太陽光発電に+の省エネ - Impress Watch

太陽光発電への憧れと“家”のこだわり

17年前の新築当時の筆者自宅

今年の夏は「電力ひっ迫注意報」が出るなど、厳しい電力需給となりました。そして冬にかけてはさらに厳しい電力需給となることが予想されています。20年近く、太陽光発電や自然エネルギーにこだわった家づくりに取り組んでいる藤本健さんの取り組みを紹介します(編集部)

かれこれ40年以上前、私が中学3年生のときに太陽電池の存在を理科の先生に教えてもらって感激して以来、太陽電池が大好きで、ずっと追いかけてきました。そして17年前、念願かなって太陽電池を屋根に設置した家を建てることができたのです。それからずっと太陽光発電とともに暮らしているのですが、家を建てる過程でせっかくならと、太陽電池以外にも自然エネルギーを活用するアイディアをいろいろ詰め込んだ結果、今も自然をかなり活用した快適な暮らしができています。

誰にでも参考になる話ではないかもしれませんが、どんなアイディアを取り入れているのか、紹介してみたいと思います。

最近、太陽光発電に反感を持つ人が増えているのを非常に残念に思っているのですが、17年間太陽電池とともに暮らしてきても、やはりいいことがいっぱい。エネルギー価格の上昇や電力不足が叫ばれる昨今ですが、ある程度であっても自分で供給できると安心感はあるし、電気を使っても罪悪感をあまり感じずに済む、というのも大きなメリットかな、と思っています。

その私が家を建てることを決めたのは2003年。当時、横浜市内のマンション住まいだったのですが、前年に3つ子が生まれ、さすがにマンションに住み続けるのは無理だ、と。当時もAV Watchなどを書くライターではあったのですが、実は本業は会社員。ライターとして外で働いてばかりいる不良社員ではありましたが、新卒で株式会社リクルートに入社して15年。当時は38歳で定年になるという制度があり、それが間近に迫っていました。それなりに定年退職金が入るので、これを使って家を建てようということを考えたのです。そしてせっかくなら、昔からの夢であった、太陽電池で暮らせる家を作ろう、と。

詳細は割愛しますが、いろいろ探した結果、住んでいたところから徒歩でも行ける近所に、探していた条件にマッチする比較的安い土地を見つけることができ、購入しました。いわゆる典型的な北斜面の土地であり、南側の土地が4mほど高いため、まさに隣の家がそびえ建っている感じ。日当たりが悪いから、かなり割安だったのですが、2階建ての家を建てれば、屋根は冬でも日当たりはいいので、大丈夫だろう、と。その土地自体が道路から3mほど高い土地だったので、この特性をうまく利用した家づくりをしていったのです。ちなみに妻が一級建築士なので、要望だけ伝えて、あとはお任せ……という流れでした。

2003年冬に今のウチを建てた土地を見つけた。南側に家がそびえたち、日当たりは悪いけれど2階建てを建てれば屋根には日は確実に当たる

もちろんソーラーパネル設置。実は強力な“太陽熱”

順番に話をしていくと、やはり、家を設計する上で第一の条件はソーラーパネルの搭載。屋根の南側全体に敷き詰めるのがベストのようにも思いますが、屋根に一部のスペースを設けてソーラー温水器も搭載したい、と思ったのです。

ご存じの方も多いと思いますが、太陽電池の発電効率は10~15%程度で、40年前に初めて太陽電池の存在を知ったころも、今も大きな差はありません。もちろん技術の進化で少しずつ効率は上がっているものの、コンピュータなどの進化とは違い、微弱な進化でしかないんですよね。

一方で、太陽の熱でお湯を沸かすソーラー温水器は50%を超えるエネルギー変換効率があり、圧倒的に有利。これを使わない手はないと、高効率の温水器を載せることも決めたのです。

240リットルのお湯を太陽熱で沸かせるソーラー温水器を設置

家族5人分を賄える大きさということで240リットルのものを設置したのですが、水240リットルというと、それだけで240kgとなるわけですから、かなりの重量。屋根もそれに耐える形で設計してもらいました。

こうしたソーラー温水器、昔は日本中に普及したのですが、いわゆる「朝日ソーラー問題」をきっかけに衰退し、経産省も太陽光発電ばかり推している関係で、すっかり影の薄い存在になってしまいました。が、これがウチの自然エネルギー供給においての最大パワーを発揮するものであるのも事実です。晴れている日はもちろん、曇りや雨の日でも、ある程度の温度まで上げることができるため、ガス代をかなり節約することができています。ちなみにウチの先月のガスの使用量は8m2で2,165円なので、ガス代が高騰した現在、一般の家庭よりかなり安く済んでいると思います。

東京ガスから届いた「ご使用量のお知らせ」。1カ月で使用したガスは8m2

ちなみに、昔のソーラー温水器をご存じの方だと、夏場は屋根から熱湯が降りてきて危険……という記憶を持っている人もいるでしょう。でも、今はそうではないんですよ。ウチはノーリツのガス給湯器を使っていますが、スカイブレンダーなるオプションを使って、ここにソーラー温水器からの熱水を入れているので、自動で温度調整できるようになっているのです。

屋根から降りてきたお湯を給湯器に入れるためのスカイブレンダー。右下にあるのが給湯器

つまり使い方は一般の給湯器とまったく同じで、40度に設定して、「風呂お湯はり」のボタンを押せば、お風呂のお湯貼りを自動で行なってくれます。このとき、晴れた日は水を混ぜて40度にしてくれるし、雨天などで温度が足りないときはガスを点火して40度にしてくれるのです。また最高で60度という制限が設けられているから、熱湯で大やけどという心配もないですね。

ノーリツの普通のリモコンを使い、給湯やお湯はりができる

太陽光発電。今は売電よりも自家消費

ソーラー温水器を置いた分、少し設置面積が少なくなってしまったけれど、それ以外の部分にシャープのソーラーパネルを設置しました。容量としては3.6kW。実際には3kWを超えて発電するようなことはめったにないので、ソーラーパネルで発電した直流の電気を100V/200Vの交流に変換するパワコンは3.0kWのものを設置しています。

屋根南面の70%にシャープのソーラーパネルを設置
ソーラーパネルで発電された直流を交流に変換するパワコン

そのパネルを選ぶ際、いろいろなメーカーのいろいろな機種を検討した中、当時としては一番安かったシャープ製品を選んだのですが、あえて屋根の上に架台を載せて設置するタイプのものを選びました。

よくみると屋根とパネルの間に隙間があることがわかる

建材一体型と呼ばれる瓦の形をしたパネルのほうが見栄えはいいのですが、発電効率を考えると後載せタイプのほうがよかったのです。というのも太陽電池は温度が上がると効率が落ちるという特性があるため、架台に載せたほうが、放熱性が高まっていいんですね。一方、こうすることで、屋根の上にカバーが取り付けられるような格好となり、屋根全体が日陰になり、家が涼しくなるというメリットもあるのです。

私自身、ソーラーパネルがない状態と比較したことはないので、ハッキリとしたデータは取れませんが、夏場は大きな効果を発揮してくれていると思います。

天井をはらず、直接屋根が見える構造なので、よりソーラーパネルで日陰になる効果が大きいはず

その発電状況、ずっとデータをとっているのですが、17年間の年間推移を表したものがこちらです。また各年の毎月の発電状況を示したグラフも併せて見てみると、なんとなく全体像が見えてくると思います。やはり発電は天候次第なので、バラツキはありますが、夏至が近く晴れの日が多い5月くらいがピークで、冬至が近い11月12月の発電量は少なくなります。

2005年から2022年までの年間発電量の推移。2022年は7月まで。縦軸の単位はkWh
2005年から2022年の各年の月間発電量の推移

この年間推移を見ると、17年経過しても、あまり大きくは劣化していないことも分かると思います。特別なメンテナンスをしているわけでもないのですが、ずっと使えているのもありがたいところ。「ソーラーパネルって汚れないの?」なんて質問を受けることがありますが、多少ホコリなどで汚れても、雨で流し去ってくれるから基本何もする必要はないんです。

もっとも、こうして毎日のようにモニターを見ているので、故障しているかどうかをすぐに確認できる体制はとっているので、その見守りがメンテナンスともいえるのですが。

ただし、パワコンのほうは電気部品の寿命があり、15年くらいで修理・交換の必要があるといわれています。そのため、そろそろなんらかの処置が必要になるかなと思ってはいるところではあります。

ここでみなさん気になるのは、この太陽光発電システムでどのくらいの電力を賄えているか、ということだと思います。猛暑日が続く昨今ですが、ウチで典型的な夏の1日のパターンのグラフがあるので、こちらをご覧ください。

2022年8月9日の発電量と使用電力の時間ごとの推移。緑が発電量で赤+オレンジが使用量

気象庁の記録ではこの8月9日、横浜は33.4度となっていますが、東京は35.7度という日。横浜北部の私の家の周りの体感温度的には35度を超えており、西日が差す窓に設置した温度計は42度を超えていた日でした。

緑の棒が太陽光発電による電力で、赤+オレンジが使った電気となっています。ほぼ1日中エアコンをつけっぱなしですが、これを見ると分かる通り、7時台から13時台までは太陽光で電力を賄えているものの14時台に別のエアコンも起動したために逆転。そこから夕方までかなり消費電力が多くなっているのが見てとれます。結果的に24時間で発電した電気は12.4kWhで消費した電力は24.3kWhと約2倍。その意味では、まったく足りないわけですが、それでも半分は自家発電で賄えたという形です。

これを電気代で見たのがこちらのグラフ。

電気代で見た1日の推移。上の緑が売電、下のオレンジが買電

上側が東京電力に売った電気代で、下側が買ったもの。こう見ると、圧倒的に買っているわけですが、1日の電気代は差し引きで596円だったという結果になります。これをどう見るかは、人それぞれだと思いますが、同じ生活をするのであれば、かなり安く抑えられているのかな…とは思っています。ちなみに、2009年からスタートした太陽光発電の電気を高く買ってくれるFIT制度は2019年11月で満10年を迎えて終了。今は1kWhあたりの売電単価は8.5円。ナイト10という電力契約であるため昼間の買電価格は単価は35.29円と4倍以上なんです。そのため、売るのはもったいないというかできるだけ自家消費したほうが得なんですよね。

FITが適用されていたころは、売電単価が48円とすごくよかったとともに、そもそも家族みんな仕事に出たり、学校に行ったりと昼に家にいることが少なかったために電力使用量も少なく、売電料金で買電料金を賄える黒字状況でした。が、売電価格が激安になるとともに、コロナ禍で毎日家で仕事をする生活になったため、電力使用量が大幅に増えて、先ほどのような状況になっているのです。

夏涼しく、冬温かい「地下」

夏も冬もエアコンの電力消費が非常に大きいのですが、それをある程度減らすための工夫もしています。前述の通り、家の屋根の上にソーラーパネルが載っていて、家全体が影になって涼しい、という点も一つですが、私の仕事部屋が地下室になっているというのも大きなポイントとなっています。

先ほども少し触れましたが、ウチの土地は道路より3mほど高くなっていて、前の持ち主は道路から階段で上がって玄関がある、という家の構造になっていました。しかしウチを建てる際、ショベルカーを使って家を建てる面積分の土をくりぬき、そこに玄関、車庫を作るとともに、その奥に私の仕事部屋を設置。そこをすべて家の基礎代わりのRC構造にし、その上に木造の2階建があるのです。つまり道路から見ると、そのままの高さで入れる玄関があり、それが1階に見えるけれど実は地下なんです。

道路からすぐ入れる車庫や玄関は「地下」

その仕事部屋は車庫の奥。車庫側に大きい窓を設置しているから、道路も見えて、北側ではあるけれど、ある程度、外の光も入ってきます。一方で、それ以外の面は、まさに地下だからRCのコンクリートは直接土に接しているんですね。この際、防水はしっかりしたけれど、あえて断熱しない、という手法をとってみたのです。もしかしたら、温度差でかなり結露するかも……という心配はしましたが、結果的にはそうした問題もなく無事。部屋が地中と直結しているために、夏涼しく、冬温かいということを実現できたのです。

もっとも、洞窟のように1年中18度というようにはいきません。それでもエアコンなしで真夏に25~28度くらい、真冬で10~15度程度にはなるので、結構このままでも生活可能です。とはいえ、パソコンなどの機材を使っていると冬はいいけれど、夏は暑くなってしまいます。そこで、夜中のエアコンの効きがよく、電気代も安く済む時間帯に冷やしておくのです。すると、地下の蓄熱効果が効いて、昼間はまったくエアコンなしでも大丈夫。それでも室温が28度を超え、多少暑く感じるときは扇風機でしのげるので、やはり地下室は大きな効果を発揮してくれますね。

なお、冬に10度くらいだと、さすがに寒すぎるのでエアコンや石油ファンヒーターなども使うのですが、電源を切ると、短時間で温度が下がってしまい、なんとかならないか……と考えた結果、今年3月に車庫側の窓に内窓を取り付ける工事をしました。その結果、かなり断熱効果が効くようになったと感じているのですが、どこまでの効果が出ているのかは、この冬に確認したいと思っているところです。

地下室の窓に曇りガラスの内窓を取り付けた。これによって冬温かくなることを期待したい

“水”も有効活用。自然を生かした家に

さて、ウチの面白いもう一つの点が水回りです。もちろん、普通に水道は引いているのですが、この土地を購入した後に、ちょっと面白いものを発見したのです。土地の角のところに、電気のポンプらしきものがある、と。今は亡き祖父の家に井戸をくみ上げる電気ポンプがあったので、それとすごく似てるな、と思ったものの、朽ち果てていて、状況がよくわからなかったのです。

土地を購入後、土地の隅にかなりボロいポンプのようなものを発見

そこで、当時、横浜市内にある井戸屋さんを探してみたところ何件か見つかり、その一つに電話をし、調べてもらうことになったのです。その結果、やはり井戸がありました。といっても、地下水脈に当てて、そこからくみ上げているというものではありません。おそらく戦後すぐくらいだろう、とのことですが、前の地主がその場所に長さ5.5mほどの素焼きの土管を突っ込んで、井戸を作っていたのです。いわゆる浅井戸というものだそうで、その周囲に振った雨が染み出して、土管の中にたまっていく構造です。

「飲むのは難しいと思うよ」ということでしたが、せっかくある井戸は有効利用したいと新しいポンプを取り付けて、蛇口をひねれば水がくみ上げられるようにしたのです。

浅井戸用ポンプを設置するとともに、蛇口などを設置し、電気で井戸をくみ上げられるようにした

家の建築工事中は、この井戸をトイレ用途などで使ってもらっていたのですが……。その期間に、改めてこの水が、どんなものなのか、水質試験をしてみたのです。その結果、非常にキレイな水であることが分かったのです。そう、十分飲用水として利用可能なレベルだったため、今ではいろいろと活用しています。

もっとも、こうした水質試験で「飲適」という表示は出ないんです。というのも、「飲適」の条件として、塩素で消毒してあることが求められ、塩素成分がはいってないと、そうは表示されないんですね。また、相手は自然なので、何かのキッカケで有害な成分が入り込むことは否定はできません。けど、年に1度程度の水質試験をする程度で、飲料水としても利用しています。

井戸に直接雨水などが入らないように、井戸の周りにブロックを積んでトタン屋根を設置して保護

これで、水道なしの生活ができるなら、最高ではあるけれど、素焼きの土管に水が染み出して貯まるのを待つという仕組みだから、生活用水を賄うのは到底無理。使いすぎると干上がって、モーターが空回りして焼けてしまうのです。そのため、あくまでも水道がメインで、いざというときのために井戸がある、という形となっています。

その井戸とは別に用意したのが雨水タンクです。180リットルのウイスキーの樽を雨水タンクとし、ここのコックをひねると水が出て、ジョーロに貯めて、家庭菜園での水やりができたり、ホースを取り付けて洗車などに使えるようにと、2つ設置しました。

家の北西と南東に1つずつウイスキー樽を設置し、雨水を溜められるようにした

これは家を建てた後に取り付けたのですが、調べてみると、いろいろな会社が雨水タンクというものを出していました。その中で、比較的安く、また見栄え的にも可愛く、設置工事までしてくれる業者が神奈川県内にあるのを見つけ、そこにお願いしたのです。片方は雨水のトヨから直接、樽の上の部分にホースをつなげて水が入り込むような形に。もう片方は設置場所の関係で、トヨから分岐させたパイプをいったん地中を通して樽の下部に接続するようにしたんです。とっても不思議な構造ではあるけれど、確かにトヨからの分岐の高さを樽より高くしているから、圧力的にちゃんと水が下から入っていくんです。

樽より高い位置でトヨから分岐させ、地中を通して下から樽に接続してる

なお、設置工事は当時2つ合わせて15万円程度だったと思います。ただ、木でできた樽であるため、設置してから12年ほどで腐ってきてしまい、使えなくなってしまいました。が、設置した業者にお願いしたところ、新しい樽への交換工事をしてくれたため、いま使っているのは2代目。業者に聞いたところ。最近のウイスキーブームもあり、日本での樽ニーズが上がり、価格が高騰し、入手しづらくなっているんだとか……。それでも、以前と同様の状態に戻してくれたのは嬉しい限りです。

夏場、日照りが続くとタンクの水が底を尽きてしまうこともしばしばですが、井戸水もあるので、これを併用しながら家庭菜園を楽しんでいます。北斜面の土地だから、冬場はまったく日が当たらず冬野菜は育てられないものの、春分から秋分までは、まあまあ日も当たるから、夏野菜だけはいっぱい収穫できるのです。

横浜市内ではありますが、こんな感じで自然の恵みを最大限取り入れた生活をしています。もっと広い土地、もっと大きな屋根があれば、さらに充実した暮らしができるんだろうな…とは思いつつも、結構なことはできているのでは……とそれなりに満足しているところ。いざという災害が起きて、ライフラインが止まった時でも、家さえ壊れなければ、結構生き延びられるかな、とも。

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