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Sunday, August 14, 2022

キリン、TNFD開示を試行 | 日経ESG - Nikkei Business Publications

キリンはTNFDの試作版を使って、自然の依存や影響、リスクの開示を試みた。TNFDが提供するLEAPという支援ツールを使った開示は世界で初めてだ。

 キリンホールディングスは、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が発表した枠組みの試作版に従う開示を世界で初めて試行した。「キリングループ環境報告書2022」で2022年7月に公開した。

 経済活動や暮らしの基盤となる森林や海洋などの自然資本の損失が進んでいる。世界経済フォーラムは、世界の総GDP(国内総生産)の約半分に当たる約44兆ドルが自然に依存し、自然の毀損が経済活動を脅かしていると指摘する。TNFDはこうした自然の損失を止めて回復軌道に乗せる「ネイチャー・ポジティブ」に世界の資金が流れるよう、国連や金融機関が設立したイニシアチブだ。企業が自然への依存と影響を把握し、リスクと機会を管理して情報開示する枠組みをつくる。その情報を機関投資家が投資判断に生かす。

 TNFDは23年9月の枠組み完成を目指し、22年3月に枠組みの試作版を発表した。キリンはこの試作版を基に開示を試みた。

 TNFDの枠組みは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と同様、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱から成る。しかし、気候の情報開示と大きく異なる点がある。自然の情報は場所にひもづき、企業が影響を与える自然の種類が多様なことだ。

 そこでTNFDは、企業がどんな自然と関係があり、依存し影響を及ぼしているかを知るツール「LEAPプログラム」を提供している(下の図)。企業は質問に答えることで、自然との接点を発見し(Locate)、依存と影響を診断し(Evaluate)、リスクと機会を評価し(Assess)、開示を準備(Prepare)できる。

■自然の情報開示を支援するツール「LEAPプログラム」

■自然の情報開示を支援するツール「LEAPプログラム」

出所:「TNFD、2022年」を基に日経ESG編集

[クリックすると拡大した画像が開きます]

科学に基づく目標設定が鍵

 キリンは20年にグループ環境ビジョン2050を発表し、事業拡大を通じてネイチャー・ポジティブを目指すと打ち出した。持続可能な生物資源利用行動計画も定めてきた。

 今回LEAPを用いて改めて全事業を点検し、自然への依存や影響が大きい優先地域、3拠点を洗い出した。「午後の紅茶」の茶葉を調達するスリランカの紅茶農園、水ストレスが深刻なオーストラリアの工場流域、草原を再生している長野県のワイン用ブドウ畑だ。

 洗い出しには、科学に基づく目標を定める団体SBTNの手法も活用した。SBTNは自然に関する科学に基づく目標(SBTs for Nature、自然SBTs)設定の手法を開発中だ。キリンはSBTNのコーポレートエンゲージメントプログラムに21年3月に参加した。

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