「いろいろと思考 小説と似ている」
共に小説家を目指していた夫婦が石川県羽咋市で、農薬も肥料も使わない自然栽培の農家として出発した。三月までの三年間、JAはくいが力を入れる自然栽培を広める地域おこし協力隊をしていた沢村悠行(ゆうこう)さん(44)と妻の純子さん(44)。当初の夢とは違うが、悠行さんは「農業には何度も喜びがある。今は農業が一番大事」と独り立ちを目指す。(松村裕子)「突きつめるところが小説家と近いかな」と悠行さん。千葉県鎌ケ谷市出身で小説家を志し、日大理事長の小説家林真理子さんも卒業した日大文芸学科で学んだ。アルバイトをしながら純文学の小説を書いていたが芽が出ず、学科の先輩で同じく小説家志望だった純子さんと結婚したのを機に、元々やりたかった農業や田舎暮らしに目を向けた。
自然栽培でリンゴを育てた木村秋則さん(青森県)の本を読んで自然栽培を知り、自然栽培が盛んな羽咋市の協力隊に応募。青森県八戸市出身の純子さんも「自然に触れる仕事がしたい」と賛同し、子ども二人と田園地帯の羽咋市菱分町(ひしわけまち)の空き家に引っ越した。
少しずつ借り増した水田は八十アール、畑は四十アール。ピーマン、ナス、ミョウガ、大根、ニンジン、アーモンド、ユズなど多品目を育てる。JA直売所やスーパー、インターネットで販売。保育所の給食用にも出荷する。
ただ、自然栽培は肥料を使わないため、収量は少ない。トマトやトウモロコシは大きく育たず虫の被害に遭い、売り物にならないなど、困難にも直面した。農薬を使わないので、草取りも大変。草は伸びるのが早く、悠行さんは「まだ残っている、早くやらなきゃ」とせかされる感じという。
悠行さんは「農作業より栽培方法の研究が楽しい。いろいろ思考するのは小説家と似ている」と話し「植物を育てるのは他の仕事にはない良さがある。単純に元気に育つのがうれしいし、収穫物があり、食べて喜んでもらえる」と今では農業にはまった。純子さんも「外の空気を吸い、土いじりをすると気分がいい」と思いは同じ。悠行さんは「ヤギやニワトリがいる昔ながらの日本の農家の庭にしたい」と田舎暮らしの充実を夢見る。
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