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Friday, March 3, 2023

カナダだからこそ出会える、新しい自分 大自然の中で気づく、日々のありがたみ - 日経BP

カナダの山旅のリピーターが多い理由として、日本からの意外な近さも考えられます。成田空港からカルガリーまでの飛行時間は約9時間。そこから自動車で1時間半ほどでバンフの町に到着します。たった半日あれば、都内からカナディアン・ロッキーの玄関口に到着してしまうのです。

カナディアン・ロッキー山脈自然公園群は、4つの国立公園と3つの州立公園で構成されています。その雄大さは、おそらくみなさんの想像を超えるでしょう。カナダ初の国立公園として知られるバンフ国立公園だけでも、長野県とほぼ同じ面積があります。すべて回ろうと思うと、時間がいくらあっても足りません。日程や体力に合わせ、自分に合った楽しみ方を見つけられるのが、カナダの国立公園の魅力です。バンフの町中のホテルに泊まって日帰り散策もできますし、山深い場所にあるロッジを拠点に、3000メートル級の山々に広がる高山植物や巨大な氷河を眺めながらハイキングすることもできます。

カナディアン・ロッキーの中には、スイスのマッターホルンと肩を並べると言われる名峰「マウント・アシニボイン」があります。この一帯には丸一日かけて歩くかヘリコプターで訪れることしかできず、世界中の登山者の憧れの的。朝焼けに染まる山々の美しさは、この地に宿泊した人しか見ることができない特権です。

同じくヘリコプターでしか行けない場所として、近年人気を集めているのがミスタヤ・ロッジです。針葉樹に囲まれた山奥にポツンとたたずむ一軒家で、宿泊客はわずか14人のみ。そのため、どこに行ってもほかのツアー客と出くわすことはありません。色とりどりの花々が咲く草地やロッジから見える全ての眺めを独占できるのは、なんとも贅沢なことだと思います。

PHOTOGRAPH BY ALPINE TOUR

針葉樹に囲まれた森の中に、ポツンとたたずむ赤い屋根の一軒家がミスタヤ・ロッジ。まるで童話の中の光景のようだ

山奥のハイキングコースにいると、野生動物が向こうから姿を見せてくれることもあります。カールした大きなツノを持つやビッグホーンシープや、時にヒグマの亜種であるグリズリーが現れることも。クマと聞くと怖いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、人間の匂いを察知させないように風下に入る、静かにするなど、動物に対するルールを守れば攻撃されることはないのです。野生動物に出くわすと、どんな人でも目が輝きます。大人が童心に帰る瞬間です。ハイキングそっちのけで、ずっと動物を観察し続けたこともありました。

ある時、先ほど紹介したマウント・アシニボインを望む「アシニボイン・ロッジ」のオーナーが、窓から外にいた一頭のグリズリーを指差して、「あの子はここで生まれて大きくなった。今シーズンは子どもを連れて帰ってきたんだよ」と教えてくれたことがありました。「いい子だけれど、子連れだから刺激を与えないように気をつけてあげてね」と。ここで暮らす人々にとっては、ただのグリズリーではなく、我が子のような存在なのです。人間よりも動物や植物が最優先。そんな当たり前のことを、ウィルダネスとしか表現できない手付かずの自然の中で身をもって実感しました。

PHOTOGRAPH BY ALPINE TOUR

そっと見守っていると、一匹のクマが静かに通り過ぎていった。この世界は人間だけのものではないことを改めて実感させられる

夜半にロッジの前で星空を眺めていると、どこかからカーンカーンという音が響いてきたこともありました。目を凝らしてみると、オスのエルクが2頭、ツノをぶつけ合っている。メスをめぐる戦いが、目の前で繰り広げられていたのです。宿泊客は誰もがみな、一言も話さずにその光景に見入りました。

例えばこれが、バスから眺めている景色やテレビ番組のワンシーンだったら、そこまで心惹かれなかったかもしれません。でも、あの場所で、澄んだ空気や音、星あかりを感じながら目に焼き付けた光景だからこそ、圧倒されていたのではないでしょうか。五感を使うことがこれほどまでに心を輝かせるということを、みなさんに実際に体験してもらいたいです。とても言葉では言い尽くせないのです。

PHOTOGRAPH BY ALPINE TOUR

ミスタヤ・ロッジ前の湖畔にて。まるで来訪を祝福してくれるかのように、大きな2つの虹がかかった

2005年、ブリティッシュコロンビア州・コロンビア山群にて。何度も訪れた場所でも、行くたびに新しい発見があるのがカナダの面白さだ

「ただ見るだけではなく、自分だけの体験してほしい」。これは私が長年お客様に対して思い続けていることです。この思いは、アルパインツアーサービスという会社の成り立ちに大いに影響されています。創業者の芳野満彦は、1965年にマッターホルン北壁の日本人初登はんを果たした登山家。その4年後には一般客を対象にした、ヨーロッパ・アルプスへのハイキング・ツアーを実施しました。当時はまだ一般の人には憧れの存在だった海外での山旅を手がけたのは、「お客様にあの景色を見せたい」という情熱があったからです。

私はここ数年、自然や文化体験などを盛り込んだ旅を意味する、「アドベンチャーツーリズム」を日本に広める活動にも取り組んでいます。直訳すると冒険旅行という意味ですが、大がかりなことをする必要はありません。自分自身の扉を開けて、まだ見ぬ景色に飛び込もうとすること。それはすでに冒険と言えるのではないでしょうか。

自然の中で自分を取り戻すことも、冒険と言えるでしょう。海に囲まれた島国で、世界有数の森林国でもある日本に住む人は、もともと自然と深いつながりを持っています。でも都市の中にいると、そのありがたみを忘れてしまうことがあります。

大自然に身を置くと、今の日本の良いところも、変えていきたいところもきっと見えてくるでしょう。私も野生動物との出会いによって、日本の食の素晴らしさに気づいた経験があります。リス科の小動物であるマーモットは、冬眠前にタンパク質を蓄えるため、たくさんの食料を必要とします。ところが秋以降は主食である草や木の実が取れない。そこで夏のうちにたくさんの植物を集めて干しておくのです。いわゆる保存食です。日の当たる岩場に干された葉っぱを眺めていると、なんとも言えない懐かしさが込み上げてきます。日本にも里山から生まれた伝統食があることを、思い起こさずにはいられません。思わず「梅干しをつくってみたくなりますよね」とお客さんに打ち明けてしまいました。

自分たちの地域や文化を守るために何をすべきか、考えるためにも新しい一歩を。そのヒントをくれるのが、カナダの大自然ではないかと思います。

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