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Tuesday, October 17, 2023

屋久島の営み、自然・動物・人が共生…ヤクシカの背中でヤクシマザルたちが毛繕い - 読売新聞オンライン

 緑の森に響き渡るコゲラやアオゲラのドラミング音。木立の中を跳びはねるヤクシカの親子。日だまりではヤクシマザルたちが毛繕いをし合う。そのうち一匹の手がすっとシカに伸びると、背中に飛び乗った。世界でもまれなほほえましい光景だ。

 シカのほうは、サルが木の上から落とした葉や木の実にありつける。こんな動物たちの姿が、屋久島で連綿と育まれてきた「共生」を物語る。

 「十五夜のお月様、山葉にかかるか、かからぬか。かかるならかかれ、やんぞれぞれの、やんぞれぞれやのや」。

 中秋の名月が里をやさしく照らし始める頃、屋久島の各集落には十五夜祭の唄が響き渡る。朝から皆で作り上げた大綱をお年寄りから子どもまで、住民総出で引っ張り合う綱引きに、里は歓声に包まれた。

 島の南西部に位置する中間集落には伝統的な十五夜祭が今も残る。山から切り出したカズラにわらを編み込んで作る綱は、昔から天に昇る竜に見立てられてきた。満ち欠けを繰り返す月の再生力にもあやかり、集落の発展を願う伝統の祭りは、人と人、人と自然を結びつける島の共生の精神そのもの。

 「野に10日、山に10日、海に10日。自然と 真摯しんし に向き合い、自然と共に生きる知恵や生活を受け継いできたからこそ、この島には、世界に認められた豊かな自然が残っている」。集落の元区長、川崎太一さん(72)はそう語る。

 「物質文明の荒波をようように免れた屋久島は、その存在そのものが人間に対する啓示であり、地球的テーマそのものである」。屋久島が世界自然遺産として登録された30年前に制定された「屋久島憲章」の前文にはこう書かれている。人と人、人と自然、そして森に生きる動物たちによる多様な共生。憲章が語るこの島の姿は、時に息苦しい現代に、その価値を問いかけ続けている。(写真と文 冨田大介、鷹見安浩)※写真は9月29日から10月2日に撮影

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