白神山地(青森、秋田両県)と屋久島(鹿児島県)が、世界自然遺産に登録されて12月11日に30年を迎える。二つの地域は、日本で初めての自然遺産として世界にその価値を伝えてきた。1年間にわたり自然遺産を撮り続けてきた2人のカメラマンがその魅力を写真と共に紹介する。(読売新聞写真部・守谷遼平、冨田大介)
■「色」が際立つ白神山地
人がほとんど立ち入ったことのないのブナの原生林が広がる。春に芽吹く鮮やかな新緑、夏は暑さを忘れさせる青い湖、秋には燃えるような紅葉、そして冬は枝と雪のモノトーンの世界。四季がはっきりとし、それぞれの「色」が際立つ。
約8000年前から変わらぬ姿を保つ森には、様々な生物が暮らす。特別天然記念物のニホンカモシカやツキノワグマなど、哺乳類35種、鳥類94種、植物540種以上、昆虫類2200種以上が生きる。
ブナの木は保水力が高く、落ち葉が重なった分厚い腐葉土は「緑のダム」と言われるほど、豊かな水を蓄える。許可を得て、青森県深浦町の景勝地「十二湖」の一つで、ひときわ美しい「沸壺(わきつぼ)の池」に潜水すると、青く透き通った水に朝日が差し込み、幻想的な青色の世界が広がっていた。
■コケがはぐくむ屋久島の植生
「ひと月に35日雨が降る」と言われるほど、雨が多い屋久島。年間平均降水量は日本平均の2倍を超え、1万ミリに迫る。降りしきる雨は地上を潤し、多様なコケ類が繁茂する。そのコケが苗床の役目を果たし豊かな植生が育まれる。
屋久島では千年以上生きた杉を「屋久杉」と呼ぶ。その中でも、樹齢約7200年ともいわれる「縄文杉」は、幹の周りが16・4メートルもあり、現在発見されている杉の中では最大の大きさだ。そのたたずまいに、人々は畏敬の念を抱く。
島で生きるヤクシカとヤクシマザルは共生関係にある。サルが頭上から落とした木の実を、シカが拾って食べる。時には、シカの背中にサルが乗ったり、毛繕いしたりする。
このような関係性は世界でも珍しく、屋久島ならではの光景だ。
日本の北と南で、悠久の時を紡いできた二つの遺産。これからも人々に愛され、変わることなく未来へと続く。
■世界自然遺産とは
国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)による世界遺産で、〈1〉重要な地質や地形〈2〉他に例のない生態系〈3〉優れた景観〈4〉生物多様性――などの要件を満たす自然が対象。日本国内では屋久島、白神山地のほか、知床など合計5件が登録されている。
世界自然遺産登録から30年、白神山地・屋久島の「色」を撮る - au Webポータル
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