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Wednesday, January 3, 2024

【この人に聞きました】北海道知床の大自然に魅せられたネイチャーガイド - 読売新聞オンライン

 北海道・知床の語源はアイヌ語のシリエトク、“地の果て”を意味するとも言われている。雪に埋まる長い冬は確かに過酷だが、荒涼とした景色が延々と続いているわけではない。エゾシカ、キタキツネ、オジロワシ……。自然の猛威と闘いながら、多くの動物たちが命をつないでいる。オホーツクの海を望めば、水平線まできらめくような流氷が広がり、そこは命あふれる世界なのだという。

 「私の仕事は思い出を提供すること」とネイチャーガイドの菅野又康彦さん(53)は言う。厳冬期は、スノーシューを履いて雪原や流氷をめぐるツアーを企画しているが、「アイヌの文化を伝えたい」とも。雪が解ければヒグマと遭遇することもあり、安全確保も重要な仕事だ。ヒグマはキムンカムイ(山の神)。自然との共生こそ、彼らの文化なのだろう。

 鉄の街、室蘭で生まれた菅野又さんは中学2年の夏休みに道内一周の自転車旅に出て、「知床の自然とともに暮らしたい」と夢見るようになった。しかし、運命は残酷だ。翌年、交通事故で両親と妹を失い、養護施設に。高校卒業後は長距離トラックの運転手になったが、「生きるだけで精一杯だった」と言う。

 40歳の時、宮城県の港町でひとりの女性と出会ったことが、彼の人生を変えた。翌2011年に東日本大震災が勃発した時、居てもたってもいられず、トラックで港町へ。女性は無事だったが、津波の惨状を目の当たりにし、「夢に挑戦する」と心に決めた。知床の玄関口、清里に移住し、17年、ネイチャーガイドとして独立。森を切り開いて車中泊のRVパークをオープンし、キャンピングカーのレンタルも始めた。

 菅野又さんの傍らには今、あの女性がいる。奥さんの晴子さんだ。彼女もガイドとして活動するようになり、コロナ禍は、オンラインツアーを募集するなど夫婦で乗り切った。知床の自然は奥深い。いつも新しい発見があり、「お客さんと一緒に感動しています」と言う。夢に向かって、今はひとりではない。

 文/三沢明彦

この人に会いに行くには
 知床はロシアからの流氷が接岸する南限、豊かな海と陸の生態系のつながりが評価され、2005年7月、世界自然遺産に登録された。海にはトドやアザラシ、クジラやシャチの姿があり、産卵のために遡上するカラフトマスやサケが、シリエトクに生息する約500頭ものヒグマの命を支えている。
  知床の大自然を感じるツアー はベルトラの 「日本を紐とく旅」 で。

 (月刊「旅行読売」2024年2月号から)

◆月刊「旅行読売」
 1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内は こちら

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