国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は下田での一枚。「自分を戒めた」理由とは?
地球の偉大さを感じる瞬間が度々ある。
静岡県の下田に撮影でお邪魔した際『龍宮窟』という、
円形の海食洞があることを知って足を延ばしてみた。
車で走っていると「こんなとこ?」と思ってしまうような、
海岸線の何げないカーブの近くにその入り口があった。
2、3台止められるかどうかの駐車場に車を止め、
係の方と話をして、目的の場所へ下りていった。
ぽっかりと天井が空いたその場所は、
澄みきった水と半円形にくりぬかれた岩の向こうに、
海が見える、なんとも素敵な場所だった。
こちらはその壁の写真になる。
地面ではない。
半分壁に埋まった石たちが顔を見せているので、
地面のように見えるが、『龍宮窟』という場所を、
形づくっている壁の一部。
粘土質なのだろうか、黄土色の壁に少し地層が見える。
きっと雨水なのだろう、その壁にアクセントをつけている。
数年前、あるドキュメンタリー番組で、
今世界中で“砂”の採掘利権を争っているという事実を知った。
日本でも以前は川底をさらって、埋め立てや、水の浄化、
なかには半導体の一部などに使っていたようだが、
今は輸入に頼っているとのこと。
ほとんどの国が同じ状態で、どんどん世界中の“砂”が少なくなり、
地形自体が変わってきているのだそうだ。
温暖化の問題は知ってはいたが、様々な問題を、
今地球は抱えているんだなぁ、とあらためて考えさせられた。
途方もなく長い時間をかけ自然が作り出す、
まるでアートのような世界。
決して人工では表現できないその美しさを、
この先もまだ大切にしていかなければと、
自分を戒めた。
自然が作り出す美しさ 永瀬正敏が撮った下田(272) - 朝日新聞デジタル
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