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Saturday, June 29, 2024

自然が作り出す美しさ 永瀬正敏が撮った下田(272) - 朝日新聞デジタル

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は下田での一枚。「自分を戒めた」理由とは?

自然が作り出す美しさ 永瀬正敏が撮った下田(272)
©Masatoshi Nagase

地球の偉大さを感じる瞬間が度々ある。

静岡県の下田に撮影でお邪魔した際『龍宮窟』という、
円形の海食洞があることを知って足を延ばしてみた。

車で走っていると「こんなとこ?」と思ってしまうような、
海岸線の何げないカーブの近くにその入り口があった。

2、3台止められるかどうかの駐車場に車を止め、
係の方と話をして、目的の場所へ下りていった。

ぽっかりと天井が空いたその場所は、
澄みきった水と半円形にくりぬかれた岩の向こうに、
海が見える、なんとも素敵な場所だった。

こちらはその壁の写真になる。
地面ではない。

半分壁に埋まった石たちが顔を見せているので、
地面のように見えるが、『龍宮窟』という場所を、
形づくっている壁の一部。
粘土質なのだろうか、黄土色の壁に少し地層が見える。
きっと雨水なのだろう、その壁にアクセントをつけている。

数年前、あるドキュメンタリー番組で、
今世界中で“砂”の採掘利権を争っているという事実を知った。
日本でも以前は川底をさらって、埋め立てや、水の浄化、
なかには半導体の一部などに使っていたようだが、
今は輸入に頼っているとのこと。

ほとんどの国が同じ状態で、どんどん世界中の“砂”が少なくなり、
地形自体が変わってきているのだそうだ。

温暖化の問題は知ってはいたが、様々な問題を、
今地球は抱えているんだなぁ、とあらためて考えさせられた。

途方もなく長い時間をかけ自然が作り出す、
まるでアートのような世界。

決して人工では表現できないその美しさを、
この先もまだ大切にしていかなければと、
自分を戒めた。

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