日本に昔からいた水辺の生き物を後世に残していくには、山を守っているだけでは足りない。そんな研究結果をまとめた論文が発表された。国立公園のような自然保護区の多くは山地にあり、平地の生物をカバーしきれていない。保全のかぎになるのは、人の利用が盛んで洪水リスクのある場所だという。いかにリスクを小さく、恵みを大きくできるか。別の研究機関から新たに公表された全国地図と合わせ、未来に向けた視点を紹介する。
「こんなにも人里に大事な場所が多いことが驚きだった」。論文をまとめた研究チームの赤坂卓美・帯広畜産大助教はこう言う。
論文は、国際保全生物学会の専門誌(https://doi.org/10.1111/ddi.13517)に掲載された。赤坂さんらは、国土交通省や環境省の全国調査データを使い、淡水にすむ魚131種、昆虫をはじめとした底生動物1395種の分布を1キロ四方の区域ごとに分析した。それぞれの種を守っていくにはどこを保全するのが効率的かを調べるプログラムで、保全が求められる区域を抽出。すでにある国立公園(特別保護地区、特別地域)との重なりを調べた。
すると国立公園は、保全が求められる区域の1~3割程度しかカバーできていなかった。絶滅危惧種122種のうち、国立公園だけで種を守ることができるのは、魚類はイサザ1種のみ、底生動物も3種にとどまるとの結果になった。
さらに、ハザードマップの浸水深から求めた洪水リスク、人口や農地など人による土地利用の強度の指標と照らし合わせると、リスクが高い区域が4割以上を占め、その多くが利用強度も高い区域だった。国の天然記念物に指定されている淡水魚イタセンパラにとっても、こうした場所が重要だという。
この結果は、国立公園内の渓流など厳格な保護区ばかりでなく、農地や住宅があるような身近な低地、水害に見舞われやすい地域の生態系を保全していく大切さを示している。
河川の氾濫(はんらん)によってつくり出された平野部は、もともと様々な水辺の生き物がいる場所だ。一方で、平らで広いために開発されやすい場所でもある。これまでも、メダカやトンボのようなありふれた生き物のすみかが奪われ、姿を消してきた。人間活動との折り合いをつけながら、残された場所をいかに守っていくかが将来に向けた課題になる。
「洪水対策を地域で議論するときに、生物多様性の保全も加えて考えてもらえれば。必ずしも保全を第一にする必要はなく、両立はできるはず」と赤坂さん。
記事の後半では、災害リスクと自然の豊かさを色分けした全国地図と、その狙いについて触れています。自分の住むまちの評価も調べることができます。
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生き物を守るには山だけじゃ足りない 自然も豊かで安全なまちはどこ - 朝日新聞デジタル
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