夏の行楽シーズンが始まった。今年の夏は新型コロナウイルスの行動制限がいまのところない見通しで、多くの人が海や山に繰り出すとみられている。
人出の増加に伴い、事故が増えることが懸念される。自然の中でのレジャーはリスクと隣り合わせであることを意識し、安全第一で楽しみたい。
警察庁の統計によると、昨年7~8月の山岳遭難の件数は533件だった。遭難者は597人で、うち死者・行方不明者は46人。コロナ以前より減ったとはいえ、登山ブームを背景になお高い水準にある。
遭難者で目立つのは中高年だ。50歳以上が6割超を占めた。長引く自粛生活により、身体能力が衰えている人もいるだろう。自分の体力や技術を過信することなく、無理のない計画や行動を心がけるべきだ。
近年はインターネットやSNS(交流サイト)の弊害を指摘する専門家もいる。仲間づくりや情報共有に役立つ一方で、ネット上の情報をうのみにして初心者が難しいルートに挑戦したり、不十分な装備で登ったりして、遭難するケースがあるという。
低山や比較的易しいとされる山でも、天候などにより危険は一気に増す。地図や雨具、ヘッドランプは必ず携行する。遭難時に発見されやすいよう登山計画書を提出する。基本を徹底したい。天候の悪化や疲労を感じたら早めに引き返す決断が身を守る。
水の事故にも注意が必要だ。昨年7~8月の水難者565人のうち、2割が中学生以下だった。小さい子どもから目を離さず、子どもだけでの水遊びも避けるよう気をつけたい。
今夏は3年ぶりに海水浴場を開設した地域もある。運営する関係者は、危険箇所や救助態勢をあらためて確認しておくべきだ。
自然の中での活動は心身の健康維持に役立つ。新型コロナの感染防止にも気を配りつつ、夏の野山を満喫したい。
[社説]夏の自然を安全に楽しもう - 日本経済新聞
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