同じ風景でも、夜に見ると、がらっと違う趣を感じた経験はないだろうか。高層ビルが林立する大都会の明かりでなくても構わない。自然と街の明かりが調和した夕景や夜景が各地にあり、心にしみるかもしれない。暑過ぎず、寒過ぎない絶好の時期。宮城県内のスポットを巡った。
気仙沼・安波山 街、海、島が醸し出す一体感
ほしのてらすは見晴らしが良く、視界が開ける。山海の自然と街の光が相まって独特の魅力を生んでいる
気仙沼市のシンボル安波山(239m)からの眺めは、南東にある魚市場や街の灯りが湾内の水面を照らす。その奥で白く淡い輝きを放つ気仙沼湾横断橋(全長1344m)、アーチ型の気仙沼大島大橋(アーチ支間長297m)と大島のシルエットとのコントラストが相まって、一体の美を醸し出している。
山頂からの眺め。青い海に2つの大きな橋が映える
5合目にある駐車場の他、徒歩約5分、15分の所にそれぞれビュースポットがある。山頂までは約20分で行くことができ、各スポットで景色の見え方の違いを楽しめる。一番のお薦めは、駐車場から徒歩約15分にある展望台「ほしのてらす」だ。
冬の季節になると明け方に海面から水蒸気が立ちあがる現象「気嵐」(けあらし)が気仙沼湾を覆う幻想的な景色を見ることもできる。
また、付近にある気仙沼市復興祈念公園からの夜景も併せてチェックしたい。
山腹の駐車場から山頂までは約20分の道のり。入り口では「りゅうの階段」が出迎えてくれる
石巻・日和山公園 星のような光の粒 水面に
日和山公園からは、旧北上川の水面に映る美しい光の粒を見られる
石巻市の日和山(56m)は、市内中心部の旧北上川河口に位置する丘陵地。約50m地点には、落語家・林家たい平さんゆかりの桜「たい平桜」がある。
その桜の脇から夜景を眺めると、旧北上川の水面に星のような光の粒が降る美しい光景に出合える。
震災後、旧北上川の堤防を整備する際に夜間照明にも配慮したデザインにした。市観光課の大和友大朗さんは「この中央地区堤防空間は『かわまちオープンパーク』と呼ばれ、周囲一帯が明かりを織りなす空間として新しい夜景を生み出している」と話す。
光の粒の正体は、堤防沿いに等間隔に立つ円筒型の照明。夜に堤防を歩くとロマンチックな空間を散策できる。
旧北上川の中瀬にある白い建物の石ノ森萬画館が目を引く
堤防に隣接する全面ガラスの建物「いしのまき元気いちば」の明かりも印象的。川向かいの中瀬公園には、宇宙船のような丸くて白い形が目印の「石ノ森萬画館」も立つ。
日和山からは水面に光を落とすいしのまき元気いちばと、震災前から親しまれる石ノ森萬画館と2つのシンボルを同時に見られるのが魅力だ。
ロマンチックないしのまき元気いちばの明かり(街づくりまんぼう提供)
日和山公園
所/石巻市日和が丘2
駐車場/約20台
仙台城跡・天守台 「空中都市」の様相帯びる
天守台から東を望む。晴れた日には太平洋まで見渡せる
仙台市街地からのアクセスが便利な仙台城跡の天守台では、昼間は北西に泉ケ岳や仙台大観音が、東には広瀬川、その奧に中心部のビル街が見える。市街地にも木々が多く、季節によって異なる景色が楽しめる。晴れた日には遠く太平洋が見渡せる。
仙台市内随一の夜景スポットでもあり、市街地を彩る宝石のような輝きと、眼下の広瀬川や西公園といった暗部とのコントラストが幻想的。暗闇に浮かぶ「空中都市」のような様相を帯びる。
落ち着いた雰囲気で夜景観賞ができる広い展望スペースも魅力だ。街の中心部はオフィスビルが立ち並び、一段と明るい夜景が期待できる。仙台空港に発着する飛行機の灯火や高層ビルの屋上に点滅する赤い光など、動きがある明かりを眺めるのも楽しい。
辺り一面がロイヤルブルーに染まってゆく夕方や、水平線から昇る太陽が見られる日の出の時間帯もお薦めだ。
日本製紙岩沼工場 昼間と一変 際立つ光沢感
日が落ちると、昼間の無機質な表情が一変。非日常の空間が生まれる
最近、工場夜景が静かな人気になっている。昼間の無機質な表情が一変し、夜になって明かりがつくと、金属やコンクリートの光沢感や質感が際立ち「非日常」の空間になる。
岩沼市の日本製紙岩沼工場。国道4号と6号が合流する交通の要衝にある。敷地は、楽天生命パーク宮城18個分に当たる62万3000㎡に上る。
紙パルプの一貫生産ラインが配置され、全国で年間に消費される新聞用紙の約2割を作り出している。
工場は24時間操業。阿武隈川を挟んで南側の亘理町側の河川敷からは、ボイラーやタービンといった工場プラントが稼働している様子が見られる。
加美・薬萊山 一夜限り 山頂から一望
眼下に広がる夜景を楽しむ昨年の参加者(観光まちづくり協会提供)
11月にナイトハイク
加美町の薬萊山(553m)に登り、景色を楽しむ一夜限りの企画もある。観光まちづくり協会が11月中旬に行う「薬萊山ナイトハイク」だ。
日中はもちろん、夜も楽しんでもらおうと、やくらいガーデンの秋のライトアップに合わせて4年前から実施している。
昨年は84人が参加。ヘッドライトを着けた参加者が、電球などで示されたルートをたどり、約1時間かけて登頂。眼下に広がるキラキラと輝く大崎平野の街明かりと、やくらいガーデンのイルミネーション、そして天空の星を楽しんだという。
観光まちづくり協会の担当者は「澄み切った秋空の下、苦労して登り眼下に広がる景色を見ると、一層興奮し、感動すると思いますよ」と太鼓判を押す。
<薬萊山ナイトハイク>
日時/ 11月中のいずれかの土曜18:00~21:00(雨天時は延期)
料金/無料
問/加美町観光まちづくり協会 TEL0229-25-7550
※ 新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、実施するかどうかを判断する
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Photo by 堀田 祐介(表紙、仙台城下の風景)
(河北ウイークリーせんだい 2022年9月22日号掲載)
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